[IIS] 2008年2月29日
報道用資料
[UT]
『日本のウォーターフットプリントの7%は非持続的な水源?』
[H07モデルの概要]


東京大学 生産技術研究所 人間・社会系部門
教授 沖 大幹、准教授 鼎 信次郎

国立環境研究所 社会環境システム研究領域
研究員 花崎 直太

[アメリカPivot灌漑]

概要

東京大学生産技術研究所の水グループでは、 国立環境研究所のグループと連携しつつ、 地球規模の水循環と世界の水需給に関する研究を進めています。 一連の研究の中で、 食料の輸出入が各国の水需給にどういう影響があるかを推計する バーチャルウォーター、 いわゆる仮想水の貿易に関しても定量的な算定を行ってきました。 バーチャルウォーター貿易は食料輸入によって 消費国が自国で生産した場合にくらべてどの程度水資源を他に転用できるか、 という仮想的な量ですが、今回は、潅漑や穀物成長、 ダム貯水池への貯留や放流といった人間活動を組み込んだ統合水循環モデルを用いて、 どの国のどういう水源(耕地への雨水、自然の河川水、大規模貯水池からの放流水、 非持続的な地下水)からの水がその食物の生育に使われたかを 世界で初めて算定しました。 この結果が2008年3月5〜7日に広島大学で開催される 土木学会水工学講演会中日に発表されるのを機会に、 プレスの皆様に事前にご説明いたします。 また、IPCCの第4次報告書、 第2作業部会 第3章(淡水資源とそのマネジメント)の和訳を Webで公開すること等も公表させていただきます。

  1. 本研究は、 科学研究費補助金 基盤研究(S) (平成19-23年度)の成果です。
  2. すでに終了した科学技術振興事業団 戦略的創造研究 推進事業(JST/CREST) 平成13年度新規発足研究領域 「水の循環系モデリングと利用システム」 『人間活動を考慮した世界水循環水資源モデル』 の成果を大いに利用しています。


補足資料、データ


本Webページ(http://hydro.iis.u-tokyo.ac.jp/Info/Press200802/)の 内容をご紹介いただけたり図表等をご利用いただける際には、 事後でも結構ですので

までご連絡をいただけますと幸いです。 [at]@に置き換えてメール送信願います。


論文概要

1. 抄訳

食料生産と水とを定量的に結びつけるvirtual waterの概念は、 日本でも広く知られるようになりつつあるが、 国際政治における水問題への関心の高まりに伴い、 EUを中心とした海外でもその定量的な推計が盛んになり始めている。 特に、これまで「食料などの生産に必要な水の量」は 外形的な統計に基づいて推計されることが多かったのに対し、 作物成長を表現できる数値シミュレーションを用いて その水の起源が雨水(green water)なのか、 潅漑水(blue water)なのか、といった区分まで推定することが 研究のひとつのフロンティアとなっている。

本研究では、ダム貯水池操作や灌漑取水、 作物生育モデル等を含む全球統合水資源モデル(花崎等、2007)に中貯水池、 非循環地下水 (非持続的な地下水)からの取水プロセスを追加した。 その結果、灌漑取水量の結果が改善され、 より再現性の高い水資源循環シミュレーションが実現した。 また、全球統合水資源モデルの出力を用いて、 「供給源別」の日本のバーチャルウォーター輸入量を推定した。 なお本研究では、従来バーチャルウォーターとの対比で リアルウォーターと呼ばれていた「輸出国で実際に消費された水資源量」の名称を water footprintと呼ぶこととした。 これは、「一人の人間が持続的な生活を営むために必要な土地面積」を表す 「エコロジカル・フットプリント」の概念を水資源に置き換えたもの、 であり、UNESCO-IHEのグループが使用し始めた用語である。

その結果、

などが明らかとなり、 日本のwater footprintは2000年当時で約42.7km3/年と算定され、 そのうち約7.3km3/年(約17%)が灌漑用水、 約2.9km3/年(約7%)が非循環地下水起源であると推計された。

なお、本研究における灌漑用水や非循環地下水という区分は 全球統合水資源モデルの中での区分であり、 必ずしも実際の灌漑用水や非循環地下水(化石水)の消費量に直結するものではない。 しかし、今回の結果は水資源の消費量のうちの 持続不可能な分を表していると考えることができ、 推定として一定の意味をもつと考えられる。 日本の食料輸入の5%以上が持続不可能な水資源に依存している可能性を示した 今回の結果により、世界の水問題に対して 日本が無関係のものではないという事がより具体的に示されたといえる。


2. 主な図表

図1 [slide04] (19KB)

図1: 従来推計してきたVirtual Water Tradeと、 今回取り上げたwater footprintの違いの概念図。

図2 [slide05] (180KB)

図2: 今回の推計に用いられたHanasaki et al.の全球統合水資源モデル(H07) の特徴。

図3 [slide10] (300KB)

図3: 今回の推計に用いられたHanasaki et al.の全球統合水資源モデル(H07) の構成、概要。

図4 [slide12] (160KB)

図4: 雨水、自然の河川流量、ダムからの放流水、中規模貯水池からの放流水、 非循環型の地下水からの取水の取り扱いの概念図。

図5 [slide13] (14KB)

図5: water footprintの算定式。

図6 [slide14] (10KB)

図6: 改良された全球統合水循環水資源モデルの検証結果。 全球の天水農地、灌漑農地における雨水起源、 灌漑水起源の蒸発散量に関する既往の推計との比較。

図7 [slide15] (27KB)

図7: World Resources Institute (WRI)による各国の地下水揚水量と 改良された全球統合水循環水資源モデルの推計値との比較検証。

図8 [slide06] (180KB)

図8: 日本のwater footprint(WF)の2000年に対する推定値。 Virtual Water(VW)との比較、 WF、VWそれぞれに対する水消費原単位の比較を含む。

図9 [slide07] (330KB)
図9: 日本の全water footprint、virtual water trade量、 灌漑水に関するwater fooprint、非循環的な地下水に関するwater footprint の世界的な流れの比較。

図10 [slide07] (400KB)
図10: 主要農畜産物別の日本のWater Footprintの利用水源ごとの割合。

3. 主な参照文献

4. その他の参考文献


5. 背景と経緯

地球規模の水循環変動、 世界の水資源問題に関する国内外の動向やこれまでの研究経緯については

等もご参考にしてください。

本論文の成果は 沖-鼎研究室 (東大生研水文学・水資源工学研究グループ)における グローバルな水循環・世界の水資源研究に関する集大成です。 卒業生、在学生、ポスドク、サポーティングスタッフのみなさんの協力のおかげです。 また、各共同研究プロジェクトの共同研究者の皆様の協力を得ています。 ここに記して感謝の意を表します。


6. その他: 最近の動向

その他、地球規模水循環変動の研究、 社会動向に関わる最近のニュースは次の通りです。


掲載紙面一覧

掲載が確認されているのは次の各紙です。


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