-K と -O オプション

   
Figure 1.10: 左:入力ファイルのヘッダ行の行数は-Hオプションで自由に指定できます.右:最終的に作成するPostScriptファイルは,それぞれの過程(軸を描く・海岸線を描く・等値線を引くetc・・・)の作成物のつなぎ合わさったものとなります.
\begin{figure}
\centering
\begin{tabular}{cc}
\epsfig{figure=eps/GMT_-H.eps} & \epsfig{figure=eps/GMT_-OK.eps}\\
\end{tabular}\end{figure}

  -Kオプションと-Oオプションは,Postscript描画を一つのファイルに「重ね書き」(ファイル自体の重ね書きではありません)するための描画制御オプションです.まず予備知識として,GMTの各描画プログラムが何をやっているのか説明しますと,これは実際にグラフを描いているのではなく,何をどこにどう描くか指定したテキストファイルであるPostscript形式のファイルを生成するのみなのです.さて,一つの図を作る完全なPostscriptファイルの構造を説明しますと,これらのファイルはすべてプレーンテキストファイルで,その中身は

  1. ヘッダー (各種初期化を行う)
  2. ボディー (図形等の描画を指示する)
  3. トレイラー(プリントアウトを指示する)

の3部分が,この順番に連続しています(図1.10参照).

  ここで,GMTのいろいろな描画を重ね合わせて一つの図を作ることを考えてみましょう.これは,軸を描く・海岸線を描く・データをプロットする…といった複数の描画指令群(それぞれが一つのGMTプログラムで作成されるのが普通です.以下では「描画ブロック」と表記します)をつなぎ合わせて一つのPostscriptファイルに仕立て上げることで可能になります(この「重ね書き」可能である点がPostscriptの著しい利点です).しかし各描画ブロックごとにヘッダーとトレイラーを書き込んでいけば,一つのファイル中に複数のヘッダやトレイラーが入ってしまい,正常な描画は期待できなくなります.そこで,最初の描画ブロックではヘッダを書き込んでトレイラーを書き込まず,最後の描画ブロックではヘッダを書き込まないでトレイラーは書き込み,そしてその間にある描画ブロックではヘッダもトレイラーも書き込まないといった細工が必要になります.

  -Kオプションは,その描画ブロックではトレイラーを書き込まないようにします.これはその描画ブロックの後に,さらに別の描画ブロックが,同じPostscriptファイルに書き込まれる場合に指定します(このオプションを指定しない場合は,トレイラーが書き込まれ,従ってPostscriptファイルを読む側から見るとすべての描画ブロックが終わったものとみなされます).一方-Oオプションは,「オーバーレイモード」と呼ばれる描画ブロックを実行します.ここではヘッダを書き込みません.つまりすでにあるPostscriptファイルに描画ブロックを追記書き込みする場合に相当します(このオプションをつけないと,ヘッダが書き込まれてしまいます).Postscriptファイルの追加書き込みにまつわる様々な不具合や異常な動作は,これらのオプションを正しく使用していないことに起因する場合があります.

Original Text by Dr. Paul Wessel
Translated by AGATASHI.