下の表に示したのは,LSSを動かすのに必要なフォーシングデータのリストです.GLASSにおけるLSS相互比較では,これらの変数をnetCDFフォーマットで用意することが要請されます.過去のプロジェクトで使われたデータセットもcentral locationでこのフォーマットでアーカイブされる予定です.このような統一を行なうことにより,LSSの相互比較を実行する手間は最小限になり,ノウハウは確実に蓄積してゆくことになるはずです.
リストを見てお気づきかと思いますが,風速は北向きと東向きの成分に分けています.これは将来風向きを考慮に入れる乱流パラメタライゼーションが行われるかもしれないからです.また,過去に行われた相互比較においては降水量を降雨量と降雪量に分ける部分で問題が起こったのですが,それを避けるために降雨量と降雪量の二つの入力変数を要求しています.
単位・正負規約・データのランクについては「一般的なコメント」のページに記述しています.
一般的なルールとして,フラックスはフォーシングデータのタイムステップに渡って平均化してください.フラックスは,LSSにデータを入れる前に時間方向の補間が行われる時,conservedされる必要があります(安形注:この部分意味不明.保存則のことか?原文はThe fluxes need to be conserved when a time interpolation is applied before the data is fed to the land-surface scheme.).一方,他の変数は瞬間値である必要があります.これは日周期をよく捉えるためです.もちろんこれは,時間的サンプリングが各時間間隔の代表値とみなせるほど高い場合のみの話です(これもよく分からない. 原文はThis obviously only applies if the time sampling is high enough for the instantaneous variables to be representative of the time interval.).下の図では,平均値で与える変数については赤で書いてあります.
データ値のとりうる範囲はすでに設定されており,netCDFファイルが作られるときにデータチェックが行われます.
変数名 | 説明 | 定義 | 単位 | 正負 (正の向き) |
Wind_N | 地表近くの風速北向き成分Near surface northward wind component | 地表近くの参照レベルで測定された風速北向き成分(3D 変数). | m/s | 北向き |
Wind_E | 地表近くの風速東向き成分Near surface eastward wind component | 地表近くの参照レベルで測定された風速の東向き成分(3D 変数). | m/s | 東向き |
Rainf | 降雨量Rainfall rate | 時間間隔における総降雨量の平均 | kg/m2s | 下向き |
サブグリッド降雨情報について | ||||
Snowf | 降雪量Snowfall rate | 時間間隔における総降雪量の平均 | kg/m2s | 下向き |
サブグリッド降雪情報について | ||||
Tair | 地表近傍の気温Near surface air temperature | 地表近くの参照レベルで測定された気温(3D 変数) | K | |
Qair | 地表近傍の比湿Near surface specific humidity | 地表近くの参照レベルで測定された比湿(3D 変数) | kg/kg | |
PSurf | 地表気圧 Surface pressure | 地表における気圧の値 | Pa | |
SWdown | 地表の短波放射 Surface incident shortwave radiation | スペクトルの短波部分の放射の入射量.入力データの時間間隔に渡って平均する(安形注:変数名が赤でないのは原文ママ) | W/m2 | 下向き |
LWdown | 地表の長波放射 Surface incident longwave radiation | 長波放射の入射量.入力データの時間間隔に渡って平均する(安形注:変数名が赤でないのは原文ママ) | W/m2 | 下向き |
CO2air | 地表近くの二酸化炭素濃度 Near surface CO2 concentration | 参照レベルにおける二酸化炭素分圧 (3D 変数). | ppmv |
もし可能ならば大気フォーシングのサブグリッド変動に関する情報もLSSに与える必要があります.このデータは観測をやる人とモデリングを行う人の間で全く違った見方をされているという問題があります.たとえば降雨量は,モデルでは対流性の成分と大規模降雨の成分とに分けられていて,いくつかのLSSはこのデータを用います.一方で,観測の立場からは地域的ばらつきを得ることは相対的に容易にできます.大気モデルがその物理プロセス記述を改良すれば,これらのモデルは観測によって得られた値により近い値を出すようになるでしょう.
したがって,ここでは両方の方式を認めることと,モデリングを行っている中心的グループにはモデルが大気変数のサブグリッド変動をよりよく記述するように改良することを求めることが提案されています.
変数Rainf_LS(Snowf_LS)ならびにRainf_C(Snowf_C)は降雨および降雪のサブグリッド特性を指定します.層状降水と対流性降水の分け方はある意味で任意であり,現在ではもはや多くのGCMでは有効ではありません.しかしながら,研究者間のコンセンサスが得られてもっと代表的な方法にたどり着くまでは,この分け方が標準となるでしょう.降水の値(RainfとSnowf_)は,大規模降水と対流性降水の和となりますが,これら二つの値のかわりにこの和の値が与えることもできます.
変数 | 記述 | 定義 | 単位 | 正負 (正の向き) |
LSRainf | 大域降雨強度Large-scale rainfall rate | 時間間隔にわたって平均した大域降雨の強度 | kg/m2s | |
CRainf | 対流性降雨強度 Convective Rainfall rate | 時間間隔にわたって平均した対流性降雨の強度 | kg/m2s | |
CSnowf | 対流性降雪強度 Convective snowfall rate | 時間間隔にわたって平均した対流性降雪の強度 | kg/m2s | |
LSSnowf | 大域降雪強度 Large-scale snowfall rate | 時間間隔にわたって平均した大域降雪の強度 Average of the large-scale snowfall over a time step of forcing data. | kg/m2s |
もっと良い方法が見つかるまでは,この空間変動を与えることとしています.
変数 | 説明 | 定義 | 単位 | 正負(正の向き) |
SVRainf | 降雨強度Rainfall rate(安形注:降雨強度の分散 では?) | 時間間隔内における平均降雨強度の空間分散 | (kg/m2s)2 | |
SVSnowf | 降雪強度Snowfall rate(安形注:降雪強度の分散 では?) | 時間間隔内における平均降雨強度の空間分散 | (kg/m2s)2 |
LSS相互比較プロジェクトは,「参加」しているLSSに地表の物理的性質をあらわす変数を与えたいと思うかもしれません.この件に関する規約を策定することは,これらのデータのサンプリングレートが異なるために,そうやさしいことではありません.以下に示す変数リストは相互比較プロジェクトごとに異なる可能性があります.というのは,どんなデータを用いるのかは各プロジェクトの科学的目的に依存するからです.どのスキームもこれらの変数の値を自分自身で決めることができる(少なくともGCMとカップリングしているなら)ので,これらの値を一切与えないというのも正しい選択です.しかしそれでもなお,もしこれらの値を与えるならば,それはメタデータ規約に従ったnetCDFフォーマットで与えるようにするべきです.
与える変数の例を以下に示します:
Data Exchange Convention | 原文(英語)