この分野における当研究室での活動は、大きく分けると
(1)地球気候システムにおける水収支、(2)衛星データを利用した解析 、
(3)数値気候モデル
の3つに分けられます。
将来的な展望としては、これらを組み合わせて気候の予測、そして水資源の予測へと
繋げてゆくことを考えています。
また、関わっている国際プロジェクトとしては、 GAME(GEWEX Asian Monsoon Experiment ; アジアモンスーンにおけるエネルギー・水循環研究観測計画 -- GEWEX(Global Energy and Water Cyle Experiment: 全球エネルギー・水循環実験計画)のサブプロジェクトの一つ) があります。 |
地球気候システムにおける水収支 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地球上に存在する水のうち、陸域 における水の全体に占める割合は、 非常に小さなものです。そして、そのうちの大半は氷河、氷床 であり、河川や土壌に存在する水は全体から見ればわずかな量です。 しかし、河川の水は循環速度が速いため、ほかの陸域の水分量よりも エネルギー、物質の輸送量は大きく、また、海洋へ淡水供給により 海流の変化をもたらし、気候システムにおいて重要な要素であると言えます。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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衛星データを利用した解析 |
気候システムの理解と将来予測のためには、まず現状を知ることが必要です。
そのために、全地球上に観測網を展開し、定期的にデータを取得する設備の構築が
不可欠です。 そこで、これまで地上における観測が続けられてきましたが、全球データの取得に際して 以下のような問題点があります。 1. 気象・土地条件等の制約により観測地点が偏在する。 2. 観測所の設置・維持には膨大なコストがかかる。 3. 地点毎に観測機器が異なる場合には誤差が生じる。 4. 全地点の観測データを定期的に収集することは困難である。 そこで現在注目されているのが、地球上を周回している衛星を利用した観測です。 衛星に観測機器を搭載することによって、全地表面を同一の観測機器で定期的に観測する ことが可能になります。 そして、衛星データを有効に利用するためには、系統立ったシステムの構築が必要であり、 現在、地上観測データを用いた検証、及び大気大循環モデルモデルへの入力による検証 が行われています。 |
数値気候モデル |
気候モデルは、気候システムのより深い理解、そして将来の気候予測のために
用いられます。
それは、流体力学の式、熱力学方程式、連続の式、物質の保存則、状態方程式などの
物理法則に基づいてある初期状態から時間積分していくことによって、温度、風速、
水蒸気量などの時間変化を求めるものです。
気候モデルは、大気大循環モデル、海洋大循環モデル、 そして陸面モデル、の主に3つのサブモデルによって構成されており、 それぞれが相互に作用することによって気候システムを再現しています。 そして、それぞれの間の相互作用を理解することは、気候予測に際して 非常に重要であり、その中で当研究室では特に、大気陸面相互作用に関しての 研究が行われています。
数値気候モデルの将来的な展望としては、気候の予測、そしてその極値現象である洪水・渇水の予測、
さらには水資源の需要と供給の予測へと繋げて行くことが目標です。
そのためには、「流域水文学」の分野で構築された
流域毎の水文学的知見が不可欠であり、また、水・物質の循環において重要な役割を果たす
生物に関する知見も必要であり、それらを地球規模の水文循環と合わせた総合的な体系づくりが
求められています。 |