地球水文学の領域
地球気候システムにおける水収支
地球上に存在する水のうち、陸域 における水の全体に占める割合は、
非常に小さなものです。そして、そのうちの大半は氷河、氷床
であり、河川や土壌に存在する水は全体から見ればわずかな量です。
しかし、河川の水は循環速度が速いため、ほかの陸域の水分量よりも
エネルギー、物質の輸送量は大きく、また、海洋へ淡水供給により
海流の変化をもたらし、気候システムにおいて重要な要素であると言えます。
地球規模での気候変動の影響による干ばつや洪水のニュースを、
近年になってよく耳にするようになった。
このように異常気象が注目され地球の将来が憂慮されている現在、
未来の気候変動を予測する手段として大気大循環モデル(GCM:General Circulation
Model) が注目を集め、それに関する研究が盛んに進められている。
GCM は大気内での物理過程を一つ一つ忠実に再現し、それらを統合した全球の大気
モデルである。同時に、このGCMに河川のモデルを組み込んで気候モデルを評価したり、
気候変動に対する河川流量の変動を予測しようという研究も進行している。
河川のモデルにはグリッドごとに流下方向情報を持った河川流路網と、
グリッド内での水収支と流下速度をモデル化した流下モデルが必要とされる。
グローバルな河川流路網でもっとも解像度が高いものは0.5゜グリッドで、既に
公開されているものもある。しかし、これらはいずれも河川流路網の検証が
厳密であるかどうかがわからない。
グローバルな流下モデルに関しては、流速を全球一定に仮定していてあまり現実的である
とは考えられなかった。そこで本研究では検証を伴った0.5゜グリッド全球河川流路網
情報を構築し、世界主要河川の流量シミュレーションを行った。