モデル出力データフォーマットに関する規約 (Version 1)

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 LSSの相互比較における,標準的な出力変数の定義をまとめたものが下の表です.ただしこの表は,GLASSの各種プロジェクトの要求する仕様が明らかになってゆくにつれて,どんどん「成長」してゆくことが予測されます.

 表を見れば分かりますが,正負規約が二種類あり,そのうち一つを,参加者の判断で採用することになります.全ての変数について,その正負規約はこれらのうちどちらか一方で統一しなければなりません.また,どちらの方式を選んだのかを,netCDFヘッダに書く必要があります.

 これらの変数の時間間隔はLSS相互比較プロジェクト毎に選ぶことになります.これはその時点で利用可能なデータと,プロジェクトの目的によって決まる事柄です.なお,一般的なルールとして,フラックスデータはその時間間隔内に渡って平均化した値を用います.一方,他のデータは各時間ステップの瞬間値を用います.後者の理由は,こうすることにより日周期やトータルの変化量をよりよく捉えることができるためです(もちろんこれはその瞬間値が各時間ステップの代表値とみなせるほどタイムサンプリング間隔が短い場合にのみいえることですが).下の表では,時間間隔内の平均値を出力する必要がある変数についてはで表記しています.

 各変数は大まかに7つのカテゴリに分けることができます.これは最初のほうは一般的なもので,後の方になるほど特殊なものになります:

O.1) 一般的なエネルギー収支成分
地表における主なエネルギーフラックスに関する変数です.この値を用いて,長期エネルギーバランスの検証が可能になります.
O.2) 一般的な水収支成分
グリッド平均の水収支に関する変数はすべてこのカテゴリに入ります.モデルの水収支を検討するのに使われる変数です.
O.3) 地表の状態に関する変数
LSSでシミュレートされた,地表の基本的な状態を表す変数です.シミュレーションにおける地表の状態がどう変わっていったかを一般的な形で表します(原文はよく分かりませんでした:It documents in a general way the simulated evolution of the surface)
O.4) 地下の状態に関する変数
地下の状態を表すデータです.熱力学的および水文学的データが入りますが,個々のプロセスに関しては詳細までは立ち入りません.
O.5) 蒸発散に関する成分
蒸発散に関するデータです.つまり,地表面から大気に向かっての水フラックスを構成する全ての成分がここに入ります(原文ではevaporationですが,どう見てもevapotranspirationのこと).
O.6) 河川流量
LSSが水の横方向への流れをシミュレートしている場合,このデータが書き出されます.特殊なカテゴリです.
O.7) 雪氷プロセスに関するデータ
これも特殊なカテゴリです.LSSが雪氷プロセスをシミュレートしている場合,出来る限り詳しいデータがここに入ります.

O.1) 一般的な熱収支成分:

(→データ値の範囲)

変数 説明 定義 単位 正の向き (慣用的) 正の向き(数学的) 優先度
SWnet 純短波放射量
Net shortwave radiation
短波放射の入射量から,シミュレートされた外向き短波放射量を引いた値.グリッドセル全体の平均値. W/m2 下向き 下向き 必須
LWnet 純長波放射量
Net longwave radiation
長波放射の入射量から,シミュレートされた外向き長波放射量を引いたもの.グリッドセル全体の平均値. W/m2 下向き 下向き 必須
Qle 潜熱フラックス
Latent heat flux
蒸発潜熱.グリッドセル全体の平均. W/m2 上向き 下向き 必須
Qh 顕熱フラックス
Sensible heat flux
顕熱エネルギー.グリッドセル全体の平均値. W/m2 上向き 下向き 必須
Qg 地中熱流量
Ground heat flux
地下に入った熱フラックス.グリッドセル全体の平均値 W/m2 下向き 上向き 必須
Qf 融解熱
Energy of fusion
固体/液体間の相変化に伴って吸収されたり放出されたりしたエネルギー W/m2 固体から液体へ 液体から固体へ 推奨
Qv 昇華熱
Energy of sublimation
固体/気体間の相変化に伴って吸収されたり放出されたりしたエネルギー W/m2 固体から気体へ 気体から固体へ オプショナル
Qtau モーメントフラックス
Momentum flux
module of the momentum lost by the atmosphere to the surface. N/m2 下向き 下向き 推奨
Qa Advective energy 雨によって積雪表面に運ばれた熱量 W/m2 下向き 下向き オプショナル
DelSoilHeat 土層の貯熱量の変化量
Change in soil heat storage
熱収支計算の対象となる土層全体の貯熱量の変化量.タイムステップ間全体にわたってのトータル量. W/m2 増加方向 増加方向 推奨
DelColdCont 積雪層のCold Contentの変化量
Change in snow cold content
熱収支計算の対象となる積雪層全体のcold contentの変化量.タイムステップ間全体にわたってのトータル量. W/m2 増加方向 増加方向 推奨

O.2) 一般的な水収支成分

(→データ値の範囲)

変数 説明 定義 単位 正の向き(慣用的) 正の向き(数学的) 優先度
Snowf 降雪強度
Snowfall rate
グリッドセル全体およびタイムステップ間にわたって平均した降雪強度 kg/m2s 下向き 下向き 必須
Rainf 降雨強度
Rainfall rate
グリッドセル全体およびタイムステップ間にわたって平均した降雨強度. kg/m2s 下向き 下向き 必須
Evap 全蒸発散量
Total Evapotranspiration
グリッドセル全体にわたって平均した全蒸発散量. kg/m2s 上向き 下向き 必須
Qs 表面流出量
Surface runoff
地表流および速い地下水流による流出量 kg/m2s グリッドセルからの流出 グリッドセルへの流入 必須
Qrec 涵養量
Recharge
河川からフラッドプレーンへ涵養された水の量 kg/m2s グリッドセルへの流入 グリッドセルからの流出 オプショナル
Qsb 地下水流出量
Subsurface Runoff
gravity drainageの量および遅いレスポンスの側方流による流出量 kg/m2s グリッドセルからの流出 グリッドセルへの流入 必須
Qsm 融雪量
Snowmelt
固体から液体への相変化により生み出された水の量の平均. kg/m2s 氷から液体水へ 氷から液体水へ 必須
DelSoilMoist 土壌水分の変化量
Change in soil moisture
土層全体に含まれている水の量の,タイムステップ間の総変化量.グリッドセル全体にわたる平均. kg/m2s 増加方向 増加方向 必須
DelSWE 積雪当量の変化量
Change in snow water equivalent
積雪層に含まれている水の量(液体水換算)の,タイムステップ間の総変化量.グリッドセル全体にわたる平均. kg/m2s 増加方向 増加方向 必須
DelSurfStor 地表貯留量の変化量
Change in Surface Water Storage
土層・積雪層・遮断以外(湖・くぼ地貯留・河道貯留など)に含まれている水の量(液体水換算)の,タイムステップ間の総変化量. kg/m2s 増加方向 増加方向 推奨
DelIntercept 遮断貯留量の変化量
Change in nterception storage
キャノピー層における液体水貯留量の変化量.タイムステップ間の総変化量. kg/m2s 増加方向 増加方向 推奨

O.3) 地表の状態を表す変数

(→データ値の範囲)

変数 説明 定義 単位 正の向き(慣用的) 正の向き(数学的) 優先度
SnowT 雪の温度
Snow Temperature
積雪層の深度平均温度.グリッドセル全体の平均. K - - 必須
VegT キャノピーの温度
Vegetation Canopy Temperature
植生キャノピー層の温度.全植生タイプにわたる平均. K - - 必須
BaresoilT 裸地面温度
Surface bare soil temperature
裸地表面の温度. K - - 必須
AvgSurfT 平均地表面温度
Average surface temperature
全ての植生タイプ・裸地面・積雪面を平均した表面温度.. K - - 必須
RadT 表面放射温度
Surface Radiative Temperature
表面有効放射温度.グリッドセル全体の平均値. K - - 必須
Albedo 表面アルビード
Surface Albedo
全波長のアルビード.グリッドセル全体の平均値. - - - 必須
SWE 積雪の水当量
Snow Water Equivalent
積雪全体の水当量.グリッドセル全体の平均. kg/m2 - - 必須
SurfStor 地表貯留量
Surface Water Storage
土層・積雪・遮断貯留以外の貯留量(湖・河道貯留・窪地貯留など) kg/m2 - - 必須

O.4) 地下の状態を表す変数

(→データ値の範囲)

変数 説明 定義 単位 正の向き(慣用的) 正の向き(数学的) 優先度
SoilMoist 各層土壌水分量
Average layer soil moisture
ユーザが(LSSが?)定義した各土層における土壌水分量(3D変数.各層ごとにデータがある). kg/m2 - - 必須
SoilTemp 土層各層の温度
Average layer soil temperature
ユーザが(LSSが?)定義した土壌層各層における温度(3D変数.各層ごとにデータがある). K - - 推奨
LSoilMoist 土層各層の液体水量
Average layer liquid mositure
ユーザが(LSSが?)定義した土壌層各層における平均の液体水の量(3D変数.各層ごとにデータがある). kg/m2 - - オプショナル
SoilWet 総土壌水分含有率
Total Soil Wetness
土壌水分の垂直方向の総和を,土層がシオレ点以上に含むことができる最大の水の量で割った値. - - - 必須

O.5) 蒸発散に関する成分

(→データ値の範囲)

変数 説明 定義 単位 正の向き(慣用的) 正の向き(数学的) 優先度
Ecanop 遮断蒸発量
Interception evaporation
樹冠遮断による蒸発量.グリッドセル内の全ての植生タイプにわたって平均した値 kg/m2 上向き 下向き 推奨
TVeg 植生からの蒸散量
Vegetation transpiration
樹冠からの蒸散量.グリッドセル内の全ての植生タイプにわたって平均した値 kg/m2 上向き 下向き 必須
ESoil 裸地面蒸発量
Bare soil evaporation
裸地面からの蒸散量. kg/m2 上向き 下向き 必須
EWater 水面からの蒸発量
Open water evaporation
地表に溜まっている水の水面からの蒸発量. kg/m2 上向き 下向き 推奨
RootMoist 根域の土壌水分
Root zone soil moisture
蒸発散に使われうる土壌水分量(シミュレーション値). kg/m2 - - 必須
CanopoInt 樹冠遮断貯留量
Total canopy water storage
樹冠遮断によりキャノピーに溜まっている水の量.グリッド内の全植生タイプに渡って平均した値. kg/m2 - - 推奨
SubSnow 雪の昇華量
Snow sublimation
地表の積雪層からの昇華量の合計 kg/m2 - - 推奨
ACond 空気力学的コンダクタンス
Aerodynamic conductance
水蒸気輸送に関する空気力学的コンダクタンス.グリッドセル内の全ての植生タイプにわたる平均. m/s - - 必須

O.6) 河川流量

(→データ値の範囲)

変数 説明 定義 単位 正の向き(慣用的) 正の向き(数学的) 優先度
Dis 河川流量
Simulated River Discharge
グリッド内の特定の点における河川流量 m3/s - - オプショナル

O.7) 雪氷プロセスに関する変数

(→データ値の範囲)

変数 説明 定義 単位 正の向き(慣用的) 正の向き(数学的) 優先度
SnowFrac 積雪面積率
Snow covered fraction
グリッド内における積雪域の割合 - - - オプショナル
IceFrac 氷面積率
Ice-covered fraction
グリッド内における海氷域の割合 - - - オプショナル
IceT 氷厚
Sea-ice thickness
シミュレーション内の水域における氷の厚さ - - - オプショナル
Fdepth 凍土凍結深
Frozen soil depth
地下温度が0度となり,この深さより上では温度は0度以下,下では0度以上となるという深さ. m 下向き 下向き オプショナル
Tdepth 凍土融解深
Depth to soil thaw
地下温度が0度となり,この深さより上では温度は0度以上,下では0度以下となるという深さ. m 下向き 下向き オプショナル
SAlbedo 積雪のアルビード
Snow albedo
積雪で覆われた地表面のアルビード.グリッドセル全体にわたる平均. - - - 推奨
SnowDepth 積雪深
Depth of snow layer
積雪層の深さ.グリッドセル全体にわたる平均. - - - 推奨

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