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Chapter2:能動型リモートセンシングによる土壌水分観測

2.1 能動型リモートセンシングの特徴

本研究で扱うのは, 能動型のマイクロ波センサを 用いた土壌水分観測である. 衛星リモートセンシングによる土壌水分観測の方法としては, マイクロ波を利用せず, 可視・近赤外の波長帯のセンサを利用する方法もある. 分光反射率を分光反射計で計測し反射率の変化と 土壌水分の変化の関係から推定する方法, 熱赤外センサによる地表面温度データと土壌水分量を 結び付ける方法, 土壌の熱慣性を熱赤外センサを用いて計測し 土壌水分量との関係から推定する方法などがある. これに対して, マイクロ波を利用する方法は, 土壌水分変化に伴う誘電率の変化を とらえる方法である. マイクロ波の利用は, 昼夜を問わず観測できる, 雲を透過し常に地表面の観測ができる という点で, 可視・近赤外に比べて優れている. さらに, マイクロ波を使用する方法には 能動型のセンサを使うほかに 受動型のセンサを使う方法がある. 受動型のセンサは 自然状態で物資から射出されるマイクロ波の強度を計測する. 黒体の場合, 物質の放射強度は 物質の絶対温度の4乗に比例し プランクの法則から求められる. 実在する物質からの放射強度は 物質に固有の射出率を黒体の場合の値に 乗じたものとなる. 土壌の射出率は, 構成する物質である水と土の誘電率によって決まる. 水と土の誘電率は土が3ないし4であるのに対して 水は80前後と大きな差がある. このため土壌水分量---土と水の割合---が変化すると 射出率が変化し その結果センサで受信する放射強度の変化として 表れることになる. この原理により 受動型のセンサからの土壌水分計測を行なうことができるが, 同時に温度の情報が必要となる. また, 受動型のマイクロ波センサは解像度が数10km程度と非常に粗い. これに対して, 能動型のマイクロ波センサでは, センサから出されたマイクロ波が 地表面で散乱(一部反射)されて戻ってくる強度を計測している. 土壌の反射率と射出率の間には キルヒホッフの法則がなりたち, 同じ周波数に対する両者の和は1となる. つまり, 反射率もまた誘電率を介して 土壌水分と関係がある. 受動型のセンサと違って, 地表面の温度に関する情報は必要ないが, 散乱を支配する地表面の凹凸(地表面粗度) の情報が必要となる. また, 合成開口レーダ(SAR=Synthetic Aperture Radar)技術により数10m 程度の高解像度が実現されている.

2.2 能動型リモートセンシングの原理

能動型リモートセンシングの原理について説明する.

2.2.1 後方散乱係数とは

能動型リモートセンシングでは対象物の後方散乱係数を計測する. 後方散乱係数の定義を古濱ほか(1986)を参考にしてまとめる. センサから射出されたマイクロ波の入射電力密度をSi, 角度方向(θ, φ)に散乱される 電力密度をSs(θ, φ)とする. SiとSsの比に面積をかけたもの,

σ=limR→∞4πR2Ss(θ, φ)/Si
が散乱断面積である. 散乱断面積は物体の散乱特性を表している. 射出された方向への散乱を後方散乱という. すなわち, θ=πの場合であり, この場合のσを後方散乱断面積という. 散乱断面積σは面積の次元を持った値である. 対象物が点ではなく, 面の場合には, 単位面積あたりの散乱断面積で表すことが多い. この値を散乱係数といい, σoであらわす. 射出された方向への散乱の場合, 後方散乱係数 という. センサで観測される値から散乱断面積および散乱係数を 求めるための式がレーダ方程式である. レーダの送信電力をPt, 利得をGt, レーダから対象物までの距離をRtとする. 対象物の受ける電力密度Siは,
Si=PtGt/4π Rt2
となる. 対象物のレーダ断面積をσ, アンテナの有効面積をArとし, 受信アンテナまでの距離をRrとすると, 受信電力は,
Pr=SiσAr/4π Rt2
となる. 利得とアンテナの有効面積の間には次のような関係がある
G=4π At2
ただし, λは電波の波長である. 以上から,
Pr=PtGtGrλ2σ/(4π)3Rt2Rr2
となる. 後方散乱の場合には, 受信と送信が同一のセンサであるので, Gt=Gr=G, Rt=Rr=rとおくことができるので,
Pr=Pt2σ/(4π)3r4
となる. Pt, G, λなどのシステムパラメータは既知であるので, r, Prがわかると, σが求まることになる. また, 均一な表面からの散乱の場合には,
Pr2/(4π)3Δ APtG2σo/r4dA
というレーダ方程式が成りたち, 後方散乱係数を求めることができる.

2.2.2 土壌面での散乱方程式

つづいて散乱理論の土壌面への応用について述べる. 能動型センサによるリモートセンシングの土壌水分計測への応用は, 土壌面を表面として扱うことが多い. 土壌面を表すパラメータとして, 散乱強度に影響する誘電率と, 表面の形状を表す粗度がある. また, システムパラメータとして表面への入射角θがある. 表面に鉛直に入射する場合がθ=0oである. 誘電率は一般的な散乱強度に影響する. 誘電率と表面反射率の関係はフレネルの法則で決まっている.

Rh=|(cosθ-(ε-sin2θ)1/2)/ (cosθ+(ε-sin2θ)1/2)|2
Rv=|(εcosθ-(ε-sin2θ)1/2)/ (εcosθ+(ε-sin2θ)1/2)|2
Rvは垂直偏波の場合, Rhは水平偏波の場合である. また, 透磁率μ=1としている. ε > 1であるので, 常にRh > Rvが成り立つ. また誘電率が大きくなるほど, 反射率が大きくなる. ところで, 土壌の誘電率は それを構成する土と水の誘電率とその構成割合すなわち土壌水分量によって決まる. 粗度については, 散乱の方向, すなわち入射角依存性に影響する. 多くの散乱モデルでは粗度の影響を2つのパラメータ --- 表面のRMS高さsと, 水平方向の相関を表すl --- で表す. sについては, 各点で測定された高さziの標準偏差である.
s=[(ΣN(i=1)(zi)2-N(z)2)/(1-N)]1/2
また, 水平方向の分布を自己相関関数ρで代表する.
ρ(x')=(Σ(N+1-j)(i=1)zizj+i+1)/(ΣNi=1zi2)
ρ(l)=1/eとなる距離lを相関距離として, このパラメータで自己相関関数を代表する. なお, 自己相関関数の形状はガウス型を仮定することが多い.
ρ(x)=exp(-x2/l2)
Ulabyらにより, 粗度に関する適用範囲が異なる 次の3つの散乱モデルが提案されている (Ulaby et al.,1984).

(1) Physical Optics Model for Relatively Smooth Surface(POM)

σohh(θ)=2k2cos2θ R2h(θ)exp[-(2kscosθ)2n=1[(4k2s2cos2θ)n/n!∫0ρn(ξ)J0(2kξsinθ)ξ dξ]
適用範囲はkl>6, l2>2. 76sλ , m<0. 25.

(2) Small Perturbation Model for Slightly Rough Surface(SPM)

σohh(θ)=4k4s2cos4θ R2h(θ)2l2exp[-(klsinθ)2]
適用範囲はkl<6, ks<0. 3, m<0. 3.

(3) Geometrical Optics Model for Relatively Rough Surface(GOM)

σohh(θ)=(1-ε1/2)(1+ε1/2)(exp(-tan2θ/2m2)/(2m2cos4θ)
適用範囲はkl>6, l2>2. 76sλ, (2kscosθ)2>10 ただし, kは波数(1/cm), J0(x)はBessel関数であり, J0(x)=Σk=0(-1)k(x/2)2k(k!)2< mは傾斜粗度であり, m=√2 s/lである.
また, Fungにより 境界面の接線方向の電磁場をFresnelの反射係数で表すKirchhoffモデルの 項と相補項で表した2組の積分方程式(Integral Equation)を解くIEMモデルが提案された (Fung, 1994)

(4)Integral Equation Model(IEM)

σopp = 4πcosθs[Ips, φs)/Iip]θs=θ = k2/2 exp (-2k2z s2n=1|Inpp|2W(n)(-2k2, 0)/n!
ただし,
Inpp=(2kz s)n fpp exp(-k2z s2)+(kzσ)n[Fpp(-kx, 0)+Fpp(kx, 0)]/2
fvv=2R||/cosθ, fhh=-2R/cosθ
Fvv(-kx, 0)+Fvv(kx, 0)=(2sinθ2(1+R||)2)/(cosθ)[(1-(1/ε)+(ε-sin2θ-εcos2θ)/(ε2cos2θ)]
Fhh(-kx, 0)+Fhh(kx, 0)=(-2sinθ2(1+R)2)/(cosθ)[ε-sin2θ-cos2θ)/(cos2θ)]
であり, kx=ksinθ, kz=kcosθ, W(n)(-2kx, 0)は粗度プロファイルをFourier変換により周波数プロファイルであらわしたものである.

2.3 能動型リモートセンシングによる土壌水分観測---既往の研究---

能動型リモートセンシングによる土壌水分計測の可能性については, 1970年代から指摘されてきた. 後方散乱係数---土壌水分量関係 に関する研究は数多く行なわれてきた. 虫明ほか(1997b)に, 過去の室内および屋外観測実験から示された 土壌水分量---後方散乱係数の関係(直線回帰式)がまとめられているが, 地表面状態の異なる各実験ごとに値は大きく異なる. 次第に粗度を定量的に評価することが 必要との認識がなされ, 2.2に示したような 土壌水分と粗度から 後方散乱係数を計算する理論式 が用いられるようになった. また, 1990年代に入ると, SAR技術を利用した 能動型のマイクロ波センサ(イメージングレーダ)が相次いで打ち上げられた. ESA(European Space Agency)からERS-1, 2(European Remote Sensing Satellite) が, 日本の宇宙開発事業団からJ ERS-1(Japanese Earth Resources Satellite)が, さらにCSA(カナダ宇宙機構)からはRADARSATが打ち上げられ, 今後も後継機の打ち上げが計画されている. これにより全球規模での土壌水分推定への期待が高まった. 所属する虫明・沖研究室でも, 10年ほど前から土壌水分計測に関する研究を進めている. 生産技術研究所千葉実験所における室内実験 (虫明ほか, 1997a), 車載型散乱計を利用しての屋外実験(虫明ほか, 1997b), J ERS-1の衛星画像を利用した土壌水分地図の作成 (虫明ほか, 1997c), などを行なってきた. このように精力的な研究が進められてきたが, 土壌水分の定量的な推定手法を確立するには至っていない. 定量的な推定を困難にしている大きな原因として, まず植生があげられる. 土壌水分計測に関する地上実験はおもに 裸地を対象として行なわれ, 植生に覆われた土地ではあまり行なわれていない. むしろ, 植生に覆われた土地では植生パラメータを 抽出する方向での研究が進められている. Kurosu et al., (1995)はERS-1により計測された 後方散乱係数と稲の成長度の関係を検討している. しかし, 現実に陸面の多くは植生で覆われており, 植生のある土地での土壌水分計測手法を確立しないと, 実用化への道は開けない. 輪笠(1995)は, 本研究と同じ植生を考慮した散乱モデルを使い, 土壌水分やほかのパラメータが 後方散乱係数に与える影響を細かく検討している. また, 植生の形状・高さに関する複数のパラメータを与えて, 後方散乱係数を計算するような 高度な散乱モデルも作成されている. たとえば, UlabyらによりMIMICS(Michigan Microwave Canopy Scattering Model)が 作成されている. 仲江川(2000)は, MIMICSを水田に適用し生育度等をモニタリングするための 基礎的検討を行なっている. もう一つ, 能動型リモートセンシングにおける 大きな課題が 粗度の定量的評価である. 現地観測においては, 粗度は串型粗度計やレーザー粗度計を用いて 直接観測することが可能であるが, 衛星観測から土壌水分を推定する際には, 粗度も同時に推定せねばならない. 三枝(1997), 仲江川ほか(1997)は、 複数の入射角モードをもつRADARSATなどへの適用を念頭におき, 土壌水分を既知とした場合の2種類の入射角での観測から, 粗度に関するパラメータ2つを図的解法で 推定する手法を提案し, 屋外実験に適用している. さらに, 仲江川ほか(1998)は、 表面散乱理論を検討した結果, 土壌水分推定のためには 個々の粗度を推定することは不必要で 粗度因子と呼ばれる粗度の効果を代表する項を推定すれば よいことを発見し, 同じく屋外実験データによる検証をしている. この手法については本研究でも利用しており, 第4章で詳しく説明する. 田殿(1998)は、 2つの粗度パラメータは独立な値をとるのではなく, 関連性があるとしている. さらに, チベット高原の永久凍土帯での 土壌水分地図の作成を行なっているが, その際に1月のデータからは, 冬期のため土壌水分が凍結しているとして 土壌水分量を0%として 粗度を推定し, 8月のデータにはこの粗度を与えて 土壌水分量を推定している. このほか, 2種類の偏波の同時観測を利用する方法もある (Oh et al., 1992). 今後打ち上げられるSARには, 2偏波での同時計測が行なえるものがあり, この手法を応用することが期待される.

2.4 衛星搭載降雨レーダの地表面センサとしての利用

本研究では能動型のマイクロ波センサとして 衛星搭載降雨レーダTRMM/PRを利用した.

2.4.1 衛星搭載降雨レーダの概要

まず, 衛星搭載降雨レーダTRMM/PRの一般的な性質について説明する.

TRMM(Tropical Rainfall Measuring Mission)

TRMMは, 気候システムへの影響が大きいにもかかわらず 未解明の部分の多かった熱帯域の降雨の解明を目的とした衛星である. 日本(NASDA)とアメリカ(NASA)により共同開発され, 1997年11月に無事打ち上げられた. 搭載しているセンサには, PR, TMI(TRMM Microwave Imager=TRMMマイクロ波放射計), VIRS(Visible and InfraRed Scanner=可視赤外放射計), CERES(Cloud and the Earth's Radiant Energy System=雲および地球放射エネルギー観測装置), LIS(Lightning Imaging Sensor=雷観測装置) がある. TRMMは熱帯を中心とした観測を行なうために軌道傾斜角が35度に設定されている. すなわち, 赤道を中心とした南北35度までの範囲内の軌道を描く. センサ自体の走査幅があるために, 実際の観測幅はもう少し広い. PRの場合37度付近までの観測が可能である. TRMMは太陽非同期衛星である. 1日に地球をおよそ16周する. また, 軌道高度は約350kmである.

PR(Precipitation Radar)

PRは世界で初めての衛星搭載型降雨レーダである. これまで衛星からの降雨観測はマイクロ波放射計またはGMSの赤外チャンネル を利用したものであった. しかしマイクロ波放射計の降雨予測は 地表面のパラメータと同時に推定しないかぎり, 陸上に適用できない. また, GMS赤外チャンネルを利用したものは, 低い積雲に対しての誤差が大きいなど 定量的な精度に課題があった. これに対して, PRは陸上・海上でも計測が可能で, しかも鉛直方向の分解能も持っている. また地上レーダと比べると 観測の広域性・均一性に優れている. PRの諸元は表2-1に示すとおりである. PRは, マイクロ波(13. 8GHz)を 鉛直下向きに射出し降雨からの散乱を計測する. 散乱強度$R$と降雨強度$Z$の間には 雨滴の分布密度に依存する関係がある. また, このマイクロ波は 降雨による減衰も受けるので, 散乱高度より上空の降雨層における 減衰の影響を補正する必要がある. このため, PRでは地表面からの散乱を計測している. 雨天時と晴天時の比較をすることで 降雨減衰の推定を行なうのが目的である.
2.4.2 衛星搭載降雨レーダの地表面センサとしての特徴
TRMM/PRの地表面センサとしての特徴を他の能動型センサとの比較で明らかにする. 能動型マイクロ波センサには, 大きく分けて3種類存在する. 主に海上風の測定を目的としたものを マイクロ波散乱計 とよぶ. そのほかの目的の能動型マイクロ波センサもマイクロ波散乱計と呼ぶことがあるが, 本論文ではこの用途のセンサに限定する. 海面からの散乱は 波の大きさ・形状に影響を受ける. さらに, 波の生成は, 海上風の影響を受けているので, 海面の後方散乱係数から 海上風の風速および風向が求まることになる. マイクロ波散乱計による海上風速の計測の歴史は古く, 1978年に打ち上げられたSEASAT-AにSASS(Seasat-A Satellite Scatterometer)という マイクロ波散乱計が搭載されている. ERS-1, 2に搭載のAMIも海上風観測モードを持っているほか, 最近では, 1996年に打ち上げられたADEOSに搭載されたNSCAT(NASA Scatterometer)があり, 今後QuickSCATやADEOS-IIにNSCATの後継機であるSeaWindsが搭載される見込みである. NSCATでは, 使用されるマイクロ波の周波数は13. 995GHzであり, KuBandに属する. また, 直下の329kmの幅を除いた衛星進行方向の両側にそれぞれ600kmずつを走査している. また, 水平分解能は25kmである. SeaWindsでは, 観測幅が両側合わせて1800kmとNSCATの1. 5倍になる予定である.
陸上の植生分布・土地利用調査・資源調査などを目的としたものを, イメージングレーダとよぶ. 一般に, マイクロ波を利用すると, 可視・近赤外に比べて波長が長い分, 解像度が粗い. しかし, 合成開口レーダ技術によって, 10数メートル程度の高い解像度を実現できるようになった. 1990年代には, 合成開口レーダ技術を利用したイメージングレーダが次々と衛星に 搭載された. ERS-1, ERS-2に搭載されたAMIや日本が打ち上げたJERS, カナダが打ち上げたRADARSATなどに搭載されているSARなどが代表的である. このうち, ERSには前述の海上風観測モードがついており, またRADARSATは使用目的に応じて入射角・走査幅・解像度の異なる複数のモードが選べるようになっている. 今後, 打ち上げ予定のENVISATやALOSでは, 複数のモード(入射角)による測定や 同時に複数の偏波の組み合わせによる測定が行なえる予定である.
また, 雨や雲の観測にも能動型のマイクロ波センサが使われるが, 対象物までの距離計測が可能であるものをレーダ(Radar:RAdio Detection And Ranging)と呼ぶ. 雨および雲粒によるマイクロ波の散乱強度を計測することで, 降雨強度や雲の分布を計測することが目的である. 雨の観測には10GHz前後, 雲の観測には100GHz前後 の周波数帯のマイクロ波が使われる. 衛星搭載の降雨レーダはTRMM/PRで初めて実現された. 衛星搭載の雲レーダは現在計画中である. 図2-1 に主な能動型マイクロ波センサを入射角と使用する周波数によって分類した. TRMM/PRの地表面センサとしての特徴は次のようにまとめられる.

TRMM/PRのシステム設計は, 降雨観測を目的としたものであるので, 地表面探査を目的とした他のセンサとはシステムが大きく異なる. しかし, 土壌水分計測に関して絶対的に有利なセンサがない以上は, 他に可能性のあるセンサを試してみる必要がある. TRMM/PRは他のセンサと大きく異なる諸元を持っているからこそ, 他のセンサでは不可能である新たな情報を抽出できる可能性を秘めている.

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