H26年度の卒論・修論テーマ例 

1. 地球温暖化時に世界の渇水や洪水や水資源はどう変化するか?
2. 世界のデルタ地域の持続可能性
3. 気候変動の影響に対する適応策オプションとその費用推計
4. 世界の氷河シミュレーションの高度化と氷河融解に伴う水資源への影響評価

研究テーマの持ち込みも歓迎します。

ちなみに現在の学生さんの取り組んでいる(た)テーマは以下などです。
(過去の発表タイトルはこちら)

・LandSat衛星を利用した氷河情報の自動抽出手法の開発(卒論)
・重力観測衛星GRACE、陸面モデル、氷河モデル、観測・統計データを組み合わせた
 グローバルな水質量変化の解析(卒論)
・バングラデシュのメガデルタにおける分岐河道と背水効果の影響評価を行い、地球温暖化が
原因となる気候変化と海水準上昇に伴うデルタ氾濫予測を実施
・全球河川氾濫モデルを用いた温暖化時の洪水浸水シミュレーションとその適応費用推計(卒論)
・気候の内部変動を考慮した氷河質量変化の検出と原因特定(修論)
・地球温暖化時の世界の洪水被害の変化(修論)
・ASTER衛星データを利用した氷河デブリ情報の抽出(修論)
・古気候実験と氷河モデル、氷河長さ復元データを用いた16世紀以降の長期氷河融解過程の解明(修論)

研究室の目標と方針

研究室の目標

当研究室では, 持続可能な社会を実現するための, 水循環の情報社会基盤の開発を目指しています.

対象とするのは日本から世界までです. 過去から現在と, 気候変動を含めた将来予測までを研究対象とし, 水循環を中心に, 持続可能な社会に必要な知見を探求します.

工学は人々に「安全で快適な環境」を提供するための学問分野ですが, これからの工学における「安全で快適な環境」の構築とは, 目先の効率や利便性の改善のみを目的とするものではなく, 身の回りの環境だけを対象とするものでもありません. 将来の世界の持続可能性の探求と確立こそが現代の人類にとって最も重要な挑戦であり, 工学における重要な研究課題です.

しかしながら, 「あとは持続可能で安定した社会に移行することだけが課題」などと考えるのは先進国のエゴかもしれません. 世界には数多くの貧しい人々が住み、数多くの貧しい国があります. 彼らが求めているのは安定ではなく発展です.世界的に資源が枯渇しエネルギーへの制約が厳しくなる中で, どのようにして貧困を減らし, 平和で安定した世界を実現していくべきでしょうか. この問いに答え, 彼らの期待に応えることは, 我々先進国の人間に課せられた重大な使命, すなわちnoblesse obligeです.

このような持続可能な社会の実現, 貧困の無い世界を目指した途上国支援の実現, 国境を越えた国土の安全保障体制の構築のためには, 諸外国の状況を網羅した地球規模での知の情報基盤の整備を行うと共に, それを用いて地球環境問題を解決に導く技術を育む必要があります.
石油や石炭などの化石資源が近いうちに枯渇することはほぼ確実ですし(すでに掘削のコストは年々高くなっています), これらが枯渇せずとも地球温暖化の脅威はほぼ確実です. そのため、想定外の新エネルギー技術が現れない限り、人類は自然から得られるエネルギーとサービスを頼って社会を再構築するしかありません. その中心には水循環があります.

研究室の方針

来ていただく皆さんに最初からお別れの時について話すことはおかしいですが, この研究室を離れるときに, 良かったなあ, と本人も他人も心から思えるような仕事をぜひ一緒にしたいと思っています.

良い仕事をする一番のコツは, 集中と継続です. 毎日朝早くから夜遅くまで頑張っても, 集中をしなければ良い仕事はできません. 効率よく集中する方法は, プロの研究者になる場合でも, 社会に出て働く場合でも, 今後の人生でおおいに役立ちます. これまで部活などでスポーツを真剣にしていたり, 受験や試験勉強で十分な成果をあげてきた皆さんは, 集中の仕方を私よりも良くご存知かもしれません. ぜひ, その感覚を, 研究をする際に発揮してください. うまく集中するには良いリラックス方法も必要でしょう. 集中をするときに人は力がうまく抜けています. 良いリラックス方法がありましたら, 私にも教えてください.

どんなに集中して仕事をしても, それを継続しなければ良い成果をあげることは難しいです. 研究を継続するために最も良い方法は, 自分が楽しいと思う研究テーマを選ぶことです. まだ見ぬ結果が楽しみで楽しみでならない, そういう研究テーマを一緒に探したいと思います. 一方で, 何も結果が出ないと, 面白いテーマでも途中で行き詰ってしまうことがあるかもしれません. そういう場合は, 最後に自分のやりたいテーマで成果を出すための技術力をつける訓練だと思い, まずは何でも良いので手を動かして何かを出してみましょう.

研究室の運営

当研究室では週1回のゼミを行い, お互いの研究の進捗状況を確認しあいます. また, 各個人の研究テーマは本人が最も楽しい!と思えるものを独立に進めていただきますが, それらを行うために必要な技術や論文の勉強会は不定期に行います.

配属後に勉強すること

水文学, 気候学, 地理学などの自然科学的な分野の知識が必要になります. また, 計算は全てUNIX(Linux)サーバー上でプログラムを組んで行うことになります. プログラム言語は得意なものを自由に使っていただいて構いません. 温暖化実験の気候モデルや地球水循環シミュレータなど, 当研究室に関係する多くの既存のプログラムは, いろいろな理由があり1)FORTRAN 2)C++が多いです.

これらの知識を前もって知っていると始めが有利なことは確かですが, 研究室に来てから勉強していただくので構いません. 研究に必要な教科書や論文は, 最初はこちらからお渡しします.