Rhône AGG ドキュメント

第五章:モデル出力データ

出力変数

参加者が出力・レポートするべき変数のリストが表5.1および表5.2です.これらは全てnetCDFフォーマットで提出してください. 変数の名前・正負規約・内容・時間ステップにわたる平均か瞬間値かの区別・単位については,すべてALMA規約に従ったものです.ALMAについての詳細情報及びnetCDF関連リンクはhttp://www.lmd.jussieu.fr/ALMA/をご覧下さい(訳注:日本語版をhttp://hydro.iis.u-tokyo.ac.jp/~agata/archive/ALMA/で製作中).

表5.1および表5.2に挙げられたもの以外に,実験2および実験3で参加者が用いたaggreagted(ないしeffective)パラメタをレポートしてください(実験2で20ないし60領域分,実験3で3領域分). ただし,モザイク(タイル)型のSVATを用いている場合,各グリッドの全タイルに対するパラメタをレポートしてください.また,これらのパラメタをaggregationする際に用いた手法について簡潔に報告してください(ただし実験2,3において配布データに含まれるデキアイデータを用いた場合はこの限りではありません).

データフォーマット

表5.1および表5.2に挙げられた変数は,前述のとおりALMA規約に従ったnetCDFフォーマットで書かれる必要があります. 表の中で,「*」がついている変数は3時間ごとの値,そうでない変数はdailyの値を出力してください.

出力変数に関する注意

このセクションでは,本実験における出力変数の定義を明確にします.

複数のレイヤ(層)をもつ積雪スキームに関しては,5層以下にまとめた結果をレポートしてください.それ以上の数のレイヤをもつSVATスキームに関しては,それぞれのスキームに適した方式でサブレイヤを平均化し,4層以下の値にダウンサイジングしてください(五番目あるいは最上層は平均化しないで下さい).

Qfz
これは積雪内に含まれていた液体水のうち氷に変化した量です(あるいはその逆の変化.規約により,液体→固体の変化量が正).これは,キャノピーから落下した水(canopy drip)や降雨が再凍結したもの,および融雪水が再凍結したものを含みます.
Qst, Snowpack through-fall
これは定められた時間内における積雪(の基部)から流れ出る全ての液体水と定義されます.積雪内における液体水のリテンション(液体水の再凍結・融解)を考慮していないモデルでは,これはQsmに等しいことに注意してください.
Qf
地表のエネルギー収支に直接影響を及ぼすエネルギーのみを含みます.地表の積雪・キャノピー遮断「槽」にたまっている雪や氷・表層土壌中の氷や凍土の凍結・融解プロセスは,いずれもエネルギーを変えます.
DelColdCont
積雪内におけるCold Content(J m-2) の総和は次のように定義されます:
cold content eq (4.1)

ここに,添え字sは雪,iはレイヤ番号(多層積雪モデルに関してはi> 1)です.他の記号は:cs:雪の熱容量(J m-3 K-1),Dsレイヤの厚さ(m),Tsレイヤ平均の雪の温度(K),Tf三重点温度(K),Lf:融解熱(J kg-1),Ws:SWE(kg m-2)Wl:積雪内の液体水の量(kg m-2)です. ここで,csは定数のこともあれば雪に関する変数(例えば雪の密度や温度など)を用いてパラメタライズされることもあります.
SliqFrac
積雪の各レイヤにおける液体水の割合です.積雪中の液体水の量(kg m-2)はこの値とSWEの積として求まります.また,積雪中のリテンションを考えないモデルの場合はこの値は0となります
RainfSnowFrac
グリッドボックスに降った雨のうち積雪によって遮断された割合です.積雪中のリテンションを考慮しないモデルでは,0とリポートされることになります(この値は,積雪による水遮断を考えるモデルにおいて質量保存が成り立つように用いられます).
SnowfSnowFrac
積雪面上に降った雪は全て積雪に遮断されると仮定しています.しかしながら,できるだけ一般性を保つために(in order to be as general as possible),この値も報告してください.
水収支
PILPS-2eと同様に,私たちは水収支を次の式で計算します:
DelSWE + DelIntercept + DelSoilMoist + DelSurfStor = Rainf + Snowf + Evap + Qs + Qsb
ここで,Evapの定義はPILPS-2eとは多少異なります(SubSurfの導入のため).
エネルギー収支
私たちはエネルギー収支を次の式で計算します:
DelSurfHeat + DelColdCont = SWnet + LWnet + Qle + Qh + Qa + Qg + Qv + Qf
(8/10訂正:最後にQvQfが加わりました)
これはPILPS-2eにおける定義とほぼ同一ですが,DelSurfHeatの定義が地表面とbulk-canopy 層の両方の貯留熱を含んでいるということが異なっています(前者は表層土層を対象に地表熱収支を考慮するスキーム,後者はキャノピーを対象に地表面熱収支を考えるモデル用).

表5.1 必要な出力変数.変数名・正負規約・定義および単位についてはすべてALMA規約に従ったもの.「3D」は,本実験において空間軸・水平軸のみならず垂直軸に沿っても変化するとされている変数である.

変数名 一般的なエネルギー収支変数 単位
1 * SWnet 純短波放射量
net shortwave radiation
W m-2
2 * LWnet 純長波放射量
net longwave radiation
W m-2
3 * Qle 潜熱フラックス
Latent heat flux
W m-2
4 * Qh 顕熱フラックス
Sensible heat flux
W m-2
5 * Qg 地熱フラックス
Ground heat flux
W m-2
6 * Qf 融解潜熱
energy of fusion
W m-2
7 * Qv 昇華潜熱
energy of sublimation
W m-2
8 * Qa 移流エネルギー
advective energy
W m-2
9 * DelSurfHeat 地表貯熱量の変化change in surface layer heat W m-2
10 * DelColdCont 積雪表層のcold contentの変化量
change in snow surface layer cold content
W m-2
変数名 一般的な水収支変数 単位
11 * Snowf 降雪強度
snowfall rate
kg m-2 s-1
12 * Rainf 降雨強度
rain rate
kg m-2 s-1
13 Evap 蒸発散量
Total Evapotranspiration
kg m-2 s-1
14 Qs 表面流出量
surface runoff
kg m-2 s-1
15 Qsb 地下水流出量
sub-surface runoff
kg m-2 s-1
16 Qsm 融雪量
snowmelt
kg m-2 s-1
17 Qfz 雪の凍結量
snow freezing
kg m-2 s-1
18 Qst 積雪から出てくる水の量
snow through-fall
kg m-2 s-1
29 DelSoilMoist 土壌水分の変化量
change in soil moisture
kg m-2
20 DelSWE SWEの変化量
change in SWE
kg m-2
21 DelSurfStor 地表貯留水量の変化量
change in surface water storage
kg m-2
22 DelIntercept 遮断貯留の変化量
change in interception storage
kg m-2
変数名 地表面状態 単位
23 * SnowT 積雪表層温度
snow surface temperature
K
24 * VegT 植生/キャノピー温度
vegetation/canopy temperature
K
25 * BaresoilT 裸地面温度
bare soil temperature
K
26 * AvgSurfT 平均地表温度
average surface temperature
K
27 * RadT 地表の放射温度
surface radiative temperature
K
28 Albedo アルビード
albedo
-
29 SWE [3D] SWE
snow water equivalent
kg m-2
30 SurfStor 地下貯留量
surface water storage
kg m-2

表5.2 表5.1と同様

変数名 地下状態 単位
31 SoilMoist [3D] 土層レイヤ毎の土壌水分量
average layer soil moisture
kg m-2
32 SMLiqFrac [3D] 土層レイヤ毎の土壌水分中に液体水が占める割合
liquid soil moisture fraction
-
33 SMFrozFrac [3D] 土壌中の液体水のうち凍った水の割合
frozen liquid soil moisture fraction
-
34 SoilWet 全Soil Wetness
total soil wetness
-
35 SoilTemp [3D] 土層レイヤ毎の温度
layer average soil temperature
K
変数名 蒸発散とその成分 単位
36 PotEvap 可能蒸発量
potential evaporation
kg m-2 s-1
37 ECanop 遮断蒸発量
interception evaporation
kg m-2 s-1
38 TVeg 蒸散量
transpiration
kg m-2 s-1
39 ESoil 裸地面蒸発量
bare soil evaporation
kg m-2 s-1
40 EWater 地表水体からの蒸発量
evaporation from water surface storage
kg m-2 s-1
41 RootMoist 根層にある土壌水分量
root zone soil water
kg m-2 s-1
42 SubSnow 雪の昇華
snow sublimation
kg m-2 s-1
43 EvapSnow 雪の蒸発
snow evaporation
kg m-2 s-1
44 SubSurf 無積雪領域からの昇華量
snow-free area sublimation
kg m-2 s-1
45 ACond 空気力学的抵抗
aerodynamic conductance
m-2 s-1
変数名 雪氷プロセス 単位
46 SnowFrac 積雪被覆面積率
snow cover fraction
-
47 RainfSnowFrac 積雪に遮断された降雨の割合
fraction of rainfall intercepted by snowpack
-
48 SnowfSnowFrac 積雪に遮断された降雪の割合
fraction of snowfall intercepted by snowpack
-
49 Fdepth 凍土厚
frozen soil depth
m
50 Tdepth 活動層の厚さ
depth to thaw
m
51 SAlbedo 雪のアルビード
snow albedo
-
52 SnowTProf [3D] 積雪の温度プロファイル
snow temperature profile
K
53 SnowDepth [3D]積雪(各レイヤ)の厚さ
snow depth
m
54 SliqFrac [3D] 積雪各レイヤの液体水の割合
liquid water fraction
-