はじめに

 GMTには,プロットを直接作成したり調整したりするプログラムが17種類用意されています(参照:表2.1). また,他に43種類のプログラムが,主にデータ処理等のために作られています.

 このセッション2では,線・シンボル(記号)・テキスト(文字列)をプロットの中に記入する方法について概説します.また,すでにいろいろな投影法を見る中でいくつかのスキルを身に着けていることと思いますが,さらにデータドメインやバウンダリーアノテーションの選択法も紹介します.

Table 2.1: GMTの1-Dならびに2-Dプロット用プログラム
プログラム 機能
ベースマップ関係
psbasemap マップの枠を作ります.スケールも付けられます.
pscoast 海岸線(陸域や海域を指定した色で塗りつぶすこともできます),河川,国境線(米国の州境も含む)を描きます.
点および線の描画
pswiggle Draw spatial time-series along their (x,y)-tracks
psxy シンボル,多角形,線分を描きます(2-D命令).
psxyz シンボル,多角形,線分を描きます(3-D命令)
ヒストグラム
pshistogram ヒストグラム(長方形型)を描きます.
psrose ヒストグラム(ローズダイアグラム)を描きます.
コンターマップ
grdcontour 2-Dグリッドデータセットからコンターを描きます.
pscontour xyzデータセットからコンターマップ(またはコンターイメージ)を,最適なtriangulationを用いて描きます.
サーフェスマップ
grdimage 2-Dグリッドデータからカラーイメージを作成します.
grdvector 2-Dグリッドデータからベクトル場を描画します.
grdview 2-Dグリッドデータから3-D透視図を作成します.
各種ユーティリティ
psclip polygonファイルを用いて,新たにクリッピングパスを設定します.
psimage SUNラスターファイルを描画します
psmask クリッピングパスを作成したり,マスクへのオーバレイを作成したりします.
psscale スケールバー(グレースケールまたはカラーの)を描きます
pstext 文字列を描画します.
 

 GMTで線やシンボルを描画するには,psxyがもっともよく使われます.この命令には,共通オプションのほかに,たくさんの固有オプションがあります.さらに,この命令は指定されたシンボルごとに異なるフォーマットのファイルを要求します.このため,psxyは他のGMTプログラムよりもマスターするのが難しくなっています.表2.2psxyの全固有オプションを示します.

Table 2.2: psxy固有のオプション類
オプション 機能
-A Suppress line interpolation along great circles
-C cpt シンボルの色をz値とcptファイルによって決定します.
-E[x][y][cap][/ pen] エラーバー(x方向・y方向)を指定した属性で描きます
-G fill シンボルの色や,多角形のフィル(塗りつぶし)色を指定します.
-L 多角形を明示的に閉じるようにします.
-M[ flag] 入力データが複数セグメントをもつ場合,ヘッダー行がflagで始まることを指定します
-N クリップ境界の近くに描かれたシンボルをクリップしません
-S[symbol][ size] シンボルを指定します.選べるのは16種類です(表2.3参照)
-W pen 線分やシンボル外形の線種を指定します.
 

 シンボルは透明である場合(-Wのみを使い,-Gを使わなかったとき)もそうでない場合(-Gを使ったとき.このとき-Wで外形の線を指定することも指定しないことも可能)もあります.-S[symbol]オプションは指定したシンボルのコード(指定記号)とサイズをとります.シンボルの種類が明示的に指定されなかった場合,シンボル指定記号はデータファイルの最後のコラム(列)に入っているものとみなされます.なお,サイズ指定はオプションです.というのは各シンボルの大きさはデータ値自体によって決まる場合があるからです.

 使用可能な15のシンボルを以下に示します:

Table:2.3 psxyの指定可能シンボル類とその指定方法.シンボル種類を小文字で指定した場合(a, c, d, h, i, s, t, x)は,シンボルは指定された大きさの円の内側に接する大きさで描かれます.逆に大文字で指定した場合(A, C, D, H, I, S, T, X)は,指定した大きさの円の面積と同じ面積になるように描画されます.
オプション シンボル
-Sasize 星(star).; sizeは外接円の半径です.
-Sbsize[/base][u] バー(bar).sizeはバーの幅を表します.uをつけると,この値がxユニットであることを表します.
バーはbase(デフォルトは0)からyまで延びます.
-Scsize 円(circle).size は直径を表します
-Sdsize ひし形(diamond). sizeはその辺を表します.
-Se 楕円(ellipse). direction, major, minorはそれぞれ長軸の方向(水平から反時計回りに測る), 長軸長,短軸長(ともに長さはインチ)で,これらは入力ファイルから読み込まれます.
-SE 楕円(ellipse). azimuth, major, minorはそれぞれ長軸の方向(垂直から時計回りに測る), 長軸長,短軸長(ともに長さはkm)で,これらは入力ファイルから読み込まれます.
-Sfgap/tick[l|L|r|R] 断層線( fault). gap, tick で,ティック(ケバ)の長さと間隔を指定します.
gap < 0のときは,この値はティックの数を表します.また, l, rはそれぞれティックを線の左に描くか右に描くか指定します
(デフォルトでは線の中心に描く).
さらに,大文字でL, Rと指定した時は線ティックではなくて三角形ケバを描きます.
-Shsize 六角形(hexagon). size は辺の長さを表します.
-Sisize 逆三角形(inverted triangle). size は辺の長さを表します.
-Slsize/string[%font] 文字(letter). sizeはフォントサイズを表します.stringで文字(列)を指定し,さらに必要ならば fontでフォントを指定します.
-Sp 点( point).ここでは sizeの指定はありません.サイズはその時の解像度で「1ピクセル」となります.
-Sssize 正方形( square). sizeは辺の長さを表します.
-Stsize 三角形( triangle). sizeは辺の長さを表します.
-Sv[thick/length/width][nnorm] 矢印( vector). direction, lengthはそれぞれ向き(水平から反時計廻り)と長さで,これらは入力ファイルから読み込まれます.
線の太さthick,矢印部分の幅と長さ(width, length)を指定することもできます.
nnormが付いている場合,長さがnorm以下であるベクトルについてはその属性が[長さ]/normでスケーリングされます.
-SV[thick/length/width][nnorm] 矢印( vector). -Svとの違いは,directionではなくazimuth(真北から時計回りの角度)をとるという点です.
地図上での角度は,用いられている投影法に従って自動的に決定されます.
-Sw[size] 扇形(pie wedge).start, stopは角度(水平から反時計廻り)で,それぞれ入力ファイルから読み込まれます.
-Sxsize クロス.sizeはクロスしている線の長さです.
 

 入力ファイルのフォーマットはいささかややこしいものになっています.というのは,上記の表にて分かるように,ある種のシンボルは他のシンボルより多くのデータを要求しますし,また,シンボルのサイズや色も入力ファイルにより決定される場合があるからです.一般的には,入力データファイルのフォーマットは次のようになります(オプショナルなものは角カッコ[]で囲んでいます):
x y [z][size][σx][σy][symbol-code]

 これでお分かりのように,どの場合にも必ず緯度・経度(あるいはx, y)は指定します.他の項目が必要になるのは次のような場合です:

  1. 各点ごとに色を変えたい場合は,-Cオプションでcptファイルを指定し,さらに入力データの3列めに各データのz値を入れます.
     
  2. 各点ごとにサイズを変えたい場合は,サイズを表す列を追加します.
     
  3. エラーバーを描きたい場合は,-Eオプションを用いることになります.このとき,σxσyを表す列を追加します.(-Ex-Eyの時は一列,-Exyの時は2列それぞれ追加となります).
     
  4. 矢印を-Sv(または-SV)オプションで描こうとする場合,サイズを表す列は実際には2列となり,それぞれdirection(-SVのときはazumuth)とlengthが入ります.
     
  5. 楕円を-Se(または-SE)オプションで描こうとする場合,サイズを表す列は実際には3列となり,それぞれdirection(-SEのときはazumuth),major, minorが入ります.
     

 さて,ここでは急いで例題に入らずに,その前にあと二つ重要なオプションについて説明することにします.それは「ペン属性」と,シンボルや多角形の「フィル(塗りつぶし)属性」です.

Original Text by Dr. Paul Wessel
Translated by AGATASHI.