GMT デフォルト値

 GMTにはたくさんの(50以上)細かいオプションがありますが,これはGMTデフォルト設定を変える事によってのみ変更できます.これらはたとえばフォントとそのサイズ・ベースマップの線の太さ・線形補間の方法などで,他にも多種多様なオプションがあります (図 1.2, 1.3, 1.4を参照してください).

 GMTのこれらの設定(デフォルト設定)はファイル.gmtdefaultsに保存されます.さて,ユーザは複数の.gmtdefaultsを階層的に作成することができます.たとえば,ホームディレクトリに「マスター」.gmtdefaultsをつくり,特定のディレクトリにはそのディレクトリでのGMTの使用目的に合わせた.gmtdefaultsを作成する,といった方法です.

 さて,カレントディレクトリに.gmtdefaultsが見つからなかったとき,GMTはユーザのマスター.gmtdefaultsを開こうとします.それもまた見つからなかったとき,GMTはそのマシン全体に共通する(site-specific).gmtdefaultsを開き,その中に書いてある設定を使用します.共通.gmtdefaultsの内容はもともとはGMT開発者がセットしたものですが,GMTインストール前にどこか変更されているかもしれません.たとえば,米国/英国単位系でなくてSI単位系を標準的に使用するようにする,等です.

 GMTのシステム初期設定はあまり変えない方がよいでしょう.というのは,デフォルト値を前提として動作するアプリケーションがたまにあるからです.ユーザはその時のGMT設定を反映した新しい.gmtdefaultsファイルを,gmtdefaultsツールを用いて作ることができます.


 
Figure 1.2:プロットの諸設定に関係するGMTパラメータ類
\begin{figure}\centering\epsfig{figure=eps/GMT_Defaults_1a.eps}\end{figure}

 なぜデフォルト値を.gmtdefaultsに格納し,しかも複数の.gmtdefaultsを扱えるようにするのでしょうか?これには少なくとも2つの十分な理由があります:

  1. すべてのオプションをコマンドラインから指定させるのは現実的ではありません.オプションの中には全く使われなかったりめったに変更されないものがたくさんあります(たとえば地図投影のエリプソイドです).
  2. 特定のプロジェクトのために特化した.gmtdefaultsを保存しておければ便利です.そうすれば,そのプロジェクト用に用意したサブディレクトリ(その中に特別製.gmtdefaultsを入れておく)の中でGMTプログラムを実行するだけで欲しい効果が得られるからです.同様に,スライドを作成するようなGMTスクリプトでは白黒レーザプリンタに出力する場合とは違った色設定やフォントサイズを使用するでしょう.こういった複数の「シナリオ」を,それぞれ違ったファイルに格納しておければ,イラストレーションの細かいエディットに伴うイライラを軽減できるでしょう.


 
Figure 1.3:プロットの諸設定に関するオプション類(中級編)
\begin{figure}\centering\epsfig{figure=eps/GMT_Defaults_1b.eps}\end{figure}

 GMTは.gmtdefaultsというファイルを開こうとすることは上述しました.といっても時にはそのデフォルト値をオーバーライドしたくなることがあるでしょう.つまり今回だけはフォントを大きくしたい…といったふうにです.これは,+filenameというオプションで指定可能です.つまりGMTコマンドをコマンドラインから入力するとき,「+」マークに続けてファイル名を指定することにより,そのファイルを.gmtdefaultsと同じように読み込ませることができます.

 もうすこし「飽きの来ない」方法としてはこんなものがあります.これはスクリプトを組んでしまうのです.どういうスクリプトかというと,

というものです.

 さらに,GMTデフォルトをその場で変えてしまうという方法もあります.これはgmtsetユーティリティで可能です.たとえば,annotationのフォントを12ptのTimes-Boldに変えたい場合は

% gmtset ANOT_FONT Times-Bold ANOT_FONT_SIZE 12
とすればOKです.

 このページに挙げた29のオプションは直接にプロット形態に反映されるものです.しかしそれ以外に(上に掲げた)単位の変更・スケールの指定といったものを含む実に数多くのパラメータもあります.これらすべてのリストは,gmtdefaultsの manページを参照してください.

 
Figure 1.4:プロットの諸設定に関するオプション類(上級編)
\begin{figure}\centering\epsfig{figure=eps/GMT_Defaults_1c.eps}\end{figure}

 スクリプトの最後で,特定のパラメータをそれまでの値に戻すことができます.GMTの指定パラメータは多いですが,どのパラメータについても一回はここで挙げた方法のどれかで変更して,どんな指定が可能なのか試してみることをお勧めします.

Original Text by Dr. Paul Wessel
Translated by AGATASHI.