第 二回 沼口敦さん記念シンポジウム
「水循環環境科学のアプローチ」

NEW!!  全講演者の発表資料を公開しました。
http://hydro.iis.u-tokyo.ac.jp/numasym2/Numa2PPT

2006 年3月29日(水)・30日(木)

東京大学駒場リサーチキャンパス
生産技術研究 所A棟大会議室(3F)

プログラム

主催:第二回 沼口敦さん記念シンポジウム実行委員会
栗田直幸 (代表:JAMSTEC・地球環境観測研究セ)
江守正多 (環境研 [地フロ])
遠藤崇浩 (総合地球研)
鼎信次郎 (総合地球研 [東大生産研])
篠田太郎 (名大HyARC)
鈴木健太郎 (東大CCSR)
樋口篤志 (千葉大CEReS)
福富慶樹 (JAMSTEC・地フロ)
芳村圭 (東大生産研)
渡部雅浩 (北大地球環境)
問い合わせ先:  numasym2@hydro.iis.u -tokyo.ac.jp
シンポジウムポスターフライヤー(PDFファイル,15MB)
第一回記念シンポジウム (2002)

実行委員会から

第 一回沼口敦さんシンポジウムは,沼口さんと交流のあった方々を中心に,沼口さんが目指していたであろう,新たな研究分野『水循環環境科学』について語り合 うことを目的として開催されました.今回は,この『水循環環境科学』の目指すべき方向性をよりはっきりと示すことを目的として,沼口さんとの交流の有無に 関わらず水循環に関わる研究に従事している第一線の若手および中堅研究者の方々に御講演をお願いしています.以下のセッション概要を御覧いただければお分 かりの通り,構成は多岐にわたっています.ここから既存分野の垣根を越えた交流,さらにはシナジー効果が生み出されることを我々一同期待しています.


各セッション概要 ()内はコンビーナー

1. 気候システムにおける水 (渡部・篠田)

気 候システムの形成・維持において,水はエネルギー輸送という形で重要な役割を担う.大気中の水の主たる供給源は海面であり,大気中での水-エネルギー変換 に大きな役割を果たす現はメソスケールの雲・降水システムである.しかし,海面からの水蒸気の供給過程やメソスケールの現象と,全球規模の大気循環の間に は著しいスケールのギャップがあり,こうした異なるスケール間の相互作用の実態については未解明な点がまだまだ多い.そこで,本セッションではマルチス ケールと相互作用をキーワードとして,大気・海洋,および全球規模・メソスケール,それぞれの視点から最新の話題を提供し,水に関わる気候システム研究の 今後についての議論を試みる.


講 演予定者(敬称略):渡部雅浩(北大),谷本陽一(北大),對馬洋子(地フロ) , 篠田太郎(名大)



2. 大気から陸面へ,陸面から大気へのインパクト(樋口)


人 々が暮らす陸上での水循環を理解することは,科学的側面のみならず,社会のニーズに答えを出すという観点から極めて重要な課題である.陸面における水循環 は,多様性のある陸面状態と大気境界層を通じた相互作用で成り立ち,気候変動に伴う陸面水循環の応答を考えた際に現象理解は未だ不十分である.さらに,大 気陸面相互作用という領域は気象学・水文学,その他関連学問の境界領域であり,観測(衛星も含む)・モデル間のスケールギャップが生じ易い.こ こでは前セッション同様マルチスケールと真の意味の「相互作用」的な研究確立を目指し,大気研究・陸面過程モデリング・観測(現地,衛星)の視点から,最 新の話題・問題点を提起し,水を key とした大気陸面相互作用研究の今後に関し議論を試みる.


講演予定者(敬称略):山田広幸(観測セ),田中賢治(京大),檜山哲哉(名大),樋口篤志(千葉大)



3. ラグランジュ的水・物質循環 (栗田・芳村)


地 表から大気に供給された水は,様々なスケールの大気現象によって輸送され,再び降水として地表に戻るといった循環を繰り返しながら廻っている.このような 相互作用を介する水の振る舞いは,気候変動に伴う水循環応答を予測するのに欠かせない知見であり,今後の発展が望まれている.このような視点で研究を行な うには,オイラー的な視点で水循環を捉えるのではなく,水を質的に捕らえ,それを追跡することによって水の起源や輸送過程を解明しようとする,ラグラン ジュ的な視点で研究を行なう必要がある.このセッションでは,ラグランジュ的な指標として用いられる化学トレーサーを使った研究,およびその解析手法を紹 介するとともに,今後の応用,発展性について議論する.


講演予定者(敬称略):栗田直幸(観測セ),河宮未知生(地フロ),藤原正智(北大),須藤健悟(地フロ)



4. エアロゾル・放射・雲・降水 (鈴木・篠田)


雲・ 降水系の振る舞いやその放射影響・気候影響は,雲核としてはたらくエアロゾルの効果と、メソスケールの組織化をもたらす力学・熱力学場の双方に密接に関連 する.このことは概念としては知られているものの,これら二つの立場からの研究は,これまで別々の場で議論されることが多かった.本セッションでは,エア ロゾル,雲物理過程,メソスケールの雲・降水システムについての現在の研究を紹介し,今後の研究においてエアロゾル-雲物理過程-降水システム-放射過程 を結びつける議論を試みる.


講演予定者(敬称略):竹村俊彦(九大),竹見哲也(東工大),鈴木健太郎(東大),茂木耕作(観測セ)



5. 水循環予測(江守)

水 循環の理解を目的とする研究がこれまで数多く行なわれてきたが,本当に理解できたかどうかは予測ができるかどうかに端的に表れる.様々な時間スケールの水 循環予測の現状と課題を概観・例示し,時間スケールが異なことによる問題の性質の違いを確認するとともにスケール横断によるシナジーの可能性を探る.


講演予定者(敬称略):加藤輝之(気象研),榎本剛(ESセ),仲江川敏之(気象研),江守正多(環境研)



6. 文理融合は可能か(鼎・遠藤)


水 は人間生存に必要不可欠なものであり,水の管理は古くから人間社会の重要な関心事項であった.このため水に関する様々な思想,研究が蓄積されてきたが,水 を扱う学問領域は細分化され続け,特に文と理との断絶は大きくなった.これに対し近頃,各領域を統合化した水研究を進めることがあたかも最大の善であるか のような風潮が現れ始めた.細分化だけに向かう方向性は是正せねばならないだろうが,どのような融合なら成功するのかとの指針や例が得られているわけでも ないにもかかわらずである.そこでここでは試みに水源管理や国際河川管理,地球温暖化影響評価といった事例を用いて,果たして社会科学と自然科学の相互補 完が可能かどうか考察したい.


講演予定者(敬称略):遠藤崇浩(地球研),高橋潔(環境研),美留町奈穂(東大),鼎信次郎(地球研)



7. パネルディスカッション~目指すべき水循環環境科学とは~

予定パネリスト(敬称略):

沖 大幹(東大),桑形恒男(農環研),佐藤正樹(東大),松本淳(東大),山中康裕(北大)