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第1回沼口敦さん記念シンポジウム
『水循環力学から水循環環境科学へ』
東京大学駒場リサーチキャンパス、2002年7月29-30日

(2002年7月12日版)

Schedule


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7月29日(月) 10:00-18:00

◯10:00 開会挨拶、沼口さん記念シンポジウム実行委員会

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◯セッション1「地球をめぐる水」 10:10-12:30 座長: 谷田貝 亜紀代

「『地球温暖化』は水循環をほんとに活発化させるのか?」
安成 哲三 (筑波大学地球科学系、地球フロンティア研究システム)
温室効果ガスの増加が地球の気温を上昇させているというかなり強い状況証拠は、 IPCC報告でもまとめられているように、すでに存在している。 気候モデルの予測も確実にそうなっている。 これらのモデルの多くは、同時に、水循環が全球的に活発化し、 降水量も増加することを予測している。しかし、 全球の気温が顕著に増加している最近20年間について、 現在利用可能な降水量、対流活動データなどを用いて、 全球的な水循環の変化を解析したところ、 特に活発化しているという傾向は現れていない。熱帯の対流活動はむしろ、 若干弱くなっている傾向もみられる。 この発表では、「温暖化」と「水循環変化」の関係について、 解析結果を示しつつ、問題提起を行いたい。
「湿潤大気大循環力学と大気大循環モデリング」
佐藤 正樹 (埼玉工業大学/地球フロンティア)
沼口君は、 大学院時代には湿潤大気大循環の研究と大気大循環モデルの開発に 主として取り組んでいた。この時期の大循環研究、モデル開発は、 その後の彼の研究の展開の土台となっていると考えられる。 沼口君と共に過ごした大学院生活を振返り、 彼が手がけた湿潤大気大循環力学研究および 大気大循環モデルの開発をレビューする。 さらに、今日における大気大循環モデルの新たな方向性と 湿潤大循環力学の接点について議論したい。
「熱帯域への乾燥空気塊の侵入について」
米山 邦夫 (海洋科学技術センター)
TOGA COAREではNumaguti et al.(1995,JMSJ)等により西部熱帯太平洋海域上空に 高緯度側から極端に乾燥した空気塊が侵入してくる現象が発見された。 同現象に関するその後の研究の進展について述べる。
「熱帯海洋上への乾燥空気の侵入現象の気候学的特徴」
谷田貝 亜紀代 (総合地球環境学研究所)、 住明正 (東大気候システム研究センター)
TOGA-COARE IOP期間中に発見された、 1,000-2,000kmスケールの乾燥空気のwarm poolへの侵入現象 (Numaguti et al. (1995))は、熱帯の対流活動に影響を与えるといわれている。 ここでは、1987-1994年についての衛星などによる水蒸気画像から、 同様の現象を抽出し、その出現特性について調べた結果を報告する。 また、 同現象のモデル出力値(CCSR/NIES AGCM,AMIP-II run)による出現特性の結果をも示す。 そしてこれら結果について、沼口氏とdiscussionしたことについても触れたい。
「対流圏における水蒸気はどんな変動をし,どのように運ばれているのか?」
大島 和裕 (北海道大学大学院地球環境科学研究科)
日々の水蒸気分布を見ていると、 平均場にはみられない面白い変動をしていることがわかる。 この変動は水蒸気輸送に伴ったものである。 そこで全球の水蒸気輸送に注目して、 平均場と擾乱の役割、また鉛直構造について紹介する。
「エル・ニーニョ後の熱帯対流圏昇温とその影響について」
寺尾 徹 (大阪学院大学情報学部)、 久保田拓志(京都大学理学研究科)
エル・ニーニョ後の熱帯対流圏昇温に伴い、熱帯の各領域におけるSST、 気温・水蒸気量がどのように変動しているか調べている。 夏季アジアモンスーン降水量との関係や、 熱帯の昇温傾向の維持メカニズムについて議論する。
「海面水温の年々変動に及ぼす表層亜表層強制の役割」
冨田 智彦 (熊本大学理学部)
北太平洋の上層海洋、大気、そしてそれらの相互作用には十年から数十年規模変動が 卓越していることが知られている。本研究は、 海洋混合層の深さと温度の大きな季節変動、そして亜表層の地衡流移流を考慮し、 冬季海面水温(SST)の十年規模変動について、 その熱収支を解析する診断方程式を提案する。 そして大気海洋の4次元同化データを用い、特に亜表層移流、 そして表層風による乱流 熱フラックスと エクマン移流による強制のバランスを診断する。

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◯セッション2「水循環を測る/研究技術」 13:30-15:50 座長: 阿部 彩子

「成層圏の水蒸気」
塩谷 雅人 (京都大学宙空電波科学研究センター)
成層圏における水蒸気は地表付近に比べて1/1000以下の低濃度であるが、 地球大気の放射収支あるいはオゾンの生成・消滅過程を考える上で重要である。 成層圏における水蒸気濃度がどのように決定されるのか、 また、近年指摘されている成層圏における水蒸気の増加が、 地球大気システムにどのような影響を及ぼしうるのかについて考察する。
「水蒸気の衛星観測から見た成層圏水蒸気と対流圏の結び付き」
庭野 将徳 (京都大学大学院理学研究科)
1990年代を通して行われた UARS/HALOE による水蒸気観測データから、 特にエル・ニーニョ、モンスーン、エアロゾル変動、ピナツボ火山噴火など 経年の時間スケールで、成層圏の水蒸気が対流圏からどのような影響を 受けうるか考えてみたい。
「大気中の水蒸気の測定手法について」
藤原 正智 (京都大学宙空電波科学研究センター)
水蒸気測定は対流圏中であっても技術的にそれほど容易なものではない。 高層気象観測用の相対湿度計と鏡面冷却方式露点温度計との 同時比較観測結果を紹介しながら、水蒸気測定の奥深さについてお話したい。
「インドネシア・スマトラ島におけるレーウィンゾンデ集中観測」
濱田 純一 (地球観測フロンティア)
「海洋大陸」と言われるインドネシアにおいては、 19世紀中より定常気象観測が実施され、 主として農業生産の観点から降水の季節変化や経年変化(ENSOとの相関等) に関する研究が行われてきた。それらを踏まえた上で、海洋大陸域の西端に位置し、 地理的に、また生態学的にも興味深い領域であるスマトラ島において、 我々自身が進めてきたレーウィンゾンデ集中観測を始めとする 降水・雲対流活動に関する観測とその意義についてお話したい。
「インドネシアスマトラ島における西風と降雨の日変化の関係」
村田 文絵 (神戸大学自然科学研究科)
インドネシア域は世界で最も対流活動が活発な地域です。 インドネシア スマトラ島の山岳地域の中に位置するコトタバンで観測された、 局地循環によると考えられる雲の日変化と 対流圏下層の西風の強弱の関係についてお話しします。
「東南アジア熱帯山岳地域における局地循環とアジアモンスーンの関わり」
大楽 浩司 (東京大学大学院工学系研究科)
GAME-Tropics研究の一環として、タイ国熱帯山岳地域において降水観測を行った。 熱帯山岳地域における降水特性と、局地スケールの降水特性に モンスーン循環が及ぼす影響について調べたことについて、報告する。
「オブジェクト指向データハンドリング -- 全てはGtoolから始まった」
堀之内 武(京都大学宙空電波科学研究センター)
沼口敦氏が作成したデータ解析ツールGtool3は、 独自かつ自由度の低いフォーマットのデータを対象とするものではあったが、 物理量のデータを自己記述的に構成し、 その特性を活かした解析ツールとして画期的なものであった。 発表者らは現在、 Gtool3に類似しつつより自由度の高いNetCDFを抽象化したデータモデルを 単位とするデータ解析ツール群を、 オブジェクト指向言語Rubyのクラスライブラリーとして開発している。 開発はまだ初期的段階であるが、データの解析と可視化、数値シミュレーション、 さらに分散データベースまで、幅広い応用が展望できるようになった。

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◯セッション3「気候システムと雲」 16:00-18:00 座長: 對馬 洋子

「大循環モデルを用いた氷期間氷期サイクル気候研究」
阿部 彩子 (東大気候システム研究センター)
「年変動における雲の放射フィードバック」
對馬 洋子 (地球フロンティア研究システム)
雲はモデルの温暖化予測における最大の不確定要素です。 人工衛星から得られた放射フラックスデータを用い、 年変動における雲の放射フィードバックを見積もりました。 モデルと比較すると、観測とは異なる傾向が得られました。
「上部対流圏の水蒸気分布と雲との関係 + 沼さんからの宿題」
江口 菜穂 (北大地球環境科学研究科、 現在京大宙空電波科学研究センターに委託中)
上部対流圏の水蒸気分布を決める要因の一つに背の高い雲が挙げられる。 この指標としてOLRを用いて上部対流圏の水蒸気との相関関係について議論する。 その際沼さんからいくつか提案して頂いた解析項目(宿題)を紹介する予定。
「全球エアロゾル輸送・放射モデルSPRINTARSの開発」
竹村 俊彦(九州大学応用力学研究所)
本モデルは、CCSR/NIES AGCMをベースとしていること、 また水循環と共通点の多いエアロゾルの輸送過程を扱っていることから、 沼口さんには開発当初から様々なアドバ イスを頂いてきた。 エアロゾルによる気候影響の評価を含めて本モデルによる成果を発表する。
「数値モデルと衛星観測を用いた雲−エアロゾル相互作用の研究」
鈴木 健太郎 (東京大学気候システム研究センター)
沼口さんによってエアロゾル間接効果が導入されたGCMと衛星観測を組み合わせた 研究を紹介する。また、 独自に進めている非静力学雲解像モデルの開発の現状について、 雲の微物理過程の扱いを中心に紹介する。
「アクティブリモートセンシングによる雲の研究」
岡本 創 (東北大学)
ミリ波帯を用いた雲レーダや可視・近赤外波長を使うライダといった アクティブセンサにより、雲の鉛直分布が得られる等新しい研究が可能になった。 地上や船舶観測による研究結果や現在計画中の衛星計画EarthCareについて紹介する。

◯懇親会 18:00-


7月30日(火) 9:30-17:00

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◯セッション4「降水システムと自己組織化」 9:30-11:30 座長: 那須野 智江

「熱帯の降水システムの組織化の研究における沼口さんの研究との接点、 および、関連する最近のTRMM衛星観測を用いた研究について」
高薮 縁(東京大学気候システム研究センター)
「MJOのコンポジットライフサイクル:北半球冬季に地球をめぐる可降水量偏差」
菊地 一佳 (東大CCSR)
MJOの振幅が年間を通して最大である北半球冬季について, OLRを指標としてコンポジット解析を行なった. その結果、SSM/Iから見積もられた可降水量偏差が地球を1周することが わかった.さらに, 過去の研究で知られている地球を1周する対流圏上層の東進擾乱と結合した 東西風偏差が下層で見られた. これらの大気擾乱と可降水量偏差は同期して東進する.以上の結果は、 MJOが再帰的に起こることを示唆している.
「雲を解像した3次元数値実験における雲の組織化」
那須野 智江 (地球フロンティア研究システム)+加藤輝之(気象研究所)
MRI/NPD-NHMを用いて長期積分を行い、 放射対流平衡状態における雲の組織化を調べている。 雲の振る舞いは、放射の扱いに依存して大きく異なる。 また、スコールラインなど、 強く組織化した雲システムとは異なったメカニズムが見られる。 これらの点に関してpreliminary resultsを報告する。
「熱帯海洋上で発生する積雲対流活動の振舞いの解明をめざして −数値実験から現地観測へ−」
久保田 尚之 (地球観測フロンティア研究システム)
博士課程のとき沼口先生のもとで熱帯海洋上の夜間に発達する対流活動について 領域大気モデルを用いた数値実験を行なってきた。 その結果から得られた仮説を現地観測より明らかにしていく研究を行なっている。 その現状を紹介する。
「梅雨前線に対する南側からの水蒸気輸送過程の相違点 〜中国大陸上と東シナ海上の比較〜」
篠田 太郎、川畑玲・坪木和久・茂木耕作・上田博 (名古屋大学地球水循環研究センター)
梅雨前線の南側の領域は水蒸気の供給源として重要な地域である。 中国大陸上では水田からの水蒸気の供給が大気の下層と中層を湿らせる一方で、 対流性の雲からの降水が陸面を湿らせる。 すなわち、梅雨前線への水蒸気の輸送過程として、 水のリサイクリング過程を考慮する必要があり、 対流雲の影響で湿潤な層はより深くなる。 一方、東シナ海上においては、混合層は深く発達せず、 水蒸気は境界層内を直接梅雨前線に向けて輸送される。 そのため、湿潤層は境界層内の非常に浅い範囲に留まる。
「梅雨水循環における中国乾燥地の役割の再考 -季節進行とメソα系との絡み-」
加藤 内藏進 (岡山大学教育学部理科教室)
大陸上の梅雨前線は、その北西方にゴビ・タクラマカン砂漠などの 乾燥・半乾燥地をひかえ、大変湿潤な地域と大変乾燥した地域との狭間に位置し、 興味深いマルチスケール水循環を示す。このことは単に、 前線の北側の気団が高温・乾燥という性質に反映されるだけでなく、 日々の変動における前線強化とメソα低気圧形成に積極的役割を 果たしていることも分かってきた。本講演では、 既に昨年の雲南でのHUBEXワークショップで発表したこのような内容に加えて、 梅雨の季節進行の中でのモンスーンも含めた広域水循環との関わり方、 平均的な梅雨前線の位置よりも更に北方への水の「しみ出し」に関わる過程など、 湿潤地と乾燥地との顕著な接点にある大陸の梅雨水循環について、 レビューも交えて再考したい。

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◯セッション5「物質循環としての水循環」 12:30-14:50 座長: 杉本 敦子

「同位体を通して見える水循環」
杉本 敦子 (京都大学生態学研究センター)
これまでにシベリア、チベット、およびその周辺で得られている 同位体観測結果を中心に、 水とその他物質(例えば植物の炭素)安定同位体を通して見た水の動き、 生物圏の水環境に関して話したいと思います。 また、土壌水の動きや植物の蒸散といった極めてローカルな水の動きが、 広域の水蒸気輸送に反映され、 同位体からどのように見えるのかをコメントしたいと思います。
「パンタナール北部における安定同位体と大気の水循環の関係について」
松山 洋 (東京都立大学大学院理学研究科地理学教室)、 宮岡 邦任 (三重大学教育学部)・増田 耕一(地球フロンティア研究システム)
国際原子力機関(IAEA)が収集・公開している降水の安定同位体のデータ(GNIP)の 予察的解析によると、パンタナール北部のCuiaba(15.60°S、56.10°W) では、 降水の重さの季節変化・年々変動が大きく、 その変化幅は南米の 9 つの観測地点中最大であることが分かっている。 本研究では、その中でも最も経年変化が大きい2月に注目し、日降水量データ、 NCEP/NCAR再解析データを用いて、 安定同位体と大気の水循環の関係について調べた結果を報告する。
「流域水文プロセス研究と同位体トレーサー」
辻村 真貴 (筑波大学地球科学系)
小流域を対象とした降雨流出プロセス研究を、 同位体トレーサー手法の観点から概観し、今後の展望を論ずる. 流域の場の条件、水文−地形プロセス相互作用、 そして小流域スケールと大流域スケールにおける水文プロセスの関係などに関し 言及する.
「森林生態系の物質循環を理解するための新しい流域研究に向けて」
大手 信人 (京大農学)
森林生態系における物質循環の実態は、 生物活動によってドライブされているというよりは、 循環する水や空気によって動かされており、 生物はその流れの中であるときは他律的に、 ときには自律的に物質を出したり吸い込んだりしている コンパートメントとしてとらえることができる. すなわち、水や空気の流れがトランスポーターで生物活動がシンク・ソースとなり、 それに風化やイオン交換等の化学的なシンク・ソースが加わった 複合系であるという見方が実態を良く表しているといえる. 物質循環を理解する上で、 森林内の気象・水文プロセスを把握することの重要性を、 日本の湿潤温帯森林でのケーススタディと、 北東アメリカの観測事例との比較をすることによって明らかにし、 今後の流域研究の方向性を示したい.
「陸面物理過程と植物競争・生長動態の相互作用に関する多層統合モデル MINoSGIの開発」
原 登志彦 (北大低温研)
プロット・スケールにおいて植生動態と物理環境(気象)の変動を記述する 統合モデルMINoSGI (Multi-layered Integrated Numerical Model of Surface Physics - Growing Plants Interaction)を開発した。 このモデルでは、植物群落における微気象モデルと 植物群落のサイズ構造動態モデルが統合されている。 実際の樹木群落のデータを用いてこの統合モデルの有効性について 検討を行った。
「変わりゆく水・大気環境下の陸上生態系の炭素窒素代謝と植物生長を DNDCモデルで予測する」
小林 和彦 (農業環境技術研究所)
陸上生態系の温室効果気体放出予測のために開発された生物地球化学モデル DNDC (http://www.dndc.sr.unh.edu/)は、 植物生長過程を取り込んだモデルに生長しつつあり、 さらに水・熱収支過程の検証と改良により、 変わりゆく水・大気環境下での陸上生態系を予測する強力なツールとなると 期待される。
「植物ゲノム研究と水循環環境科学との接点」
桑形 恒男 (農業環境技術研究所)
近年、植生が水循環や物質循環に与える影響や、 地球規模での気候変動と生態系の相互作用に関する研究が急速に進展している。 このような研究を推進する上で、植物の環境応答や植物生理学的な知見が欠かせない。 本講演では、やはり近年進展が著しい植物ゲノム研究と、 水循環環境科学との接点について、植物の吸水・蒸散プロセスの立場から議論したい。

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◯セッション6「水循環環境科学へ向けて」 15:00-16:40 座長: 山中 康裕

「地球環境研究 ---沼口さんが目指したものと目指さなかったもの」
江守 正多 (地球フロンティア研究システム; 国立環境研究所より出向中)
国立環境研究所時代の沼口さんをずっと側で見ており、 自分の地球環境研究に対するスタンスもその影響を大きく受けました。 沼口さんは温暖化実験のようなものにはあまり積極的でなかったですが、 自分はその影響を受けたにもかかわらずそういうものを 積極的にやろうという立場に居ます。 沼口さんの考え、世の中一般(?)の考え、そして自分の考えを対比させながら、 地球環境研究のあり方について再考してみたいと思います。
「水循環力学を知らない世界から想像する水循環環境科学」
栗田 直幸 (地球観測フロンティア)
沼口さんは、水循環力学研究を行った際に生じた問題に対して、 その疑問を解決できる新たな手法を貪欲に模索し、 目的意識をもちながら異分野交流し、その結果、 水循環環境科学を創造されたように思います。 沼さんが行って来た異分野交流の旅の途中で、 地球化学を専攻していた自分は沼さんと出会い、 沼口的異分野交流法をまのあたりにし、そのパワーと努力に感動し、 弟子いりしました。その弟子は 現在、 沼さんとは逆方向に水循環力学と異分野交流しており、 そんな自分が想像する、 気象学と地球化学が融合する自分なりの水循環環境科学の可能性とその展望について、 自分が考えている研究テーマを例にあげて述べたいと思います。
「『変動圏』の地理学・物理学そして経済学」
山中 大学 (地球観測フロンティア研究システム/ 神戸大学大学院自然科学研究科)
地球システムを考えるとき、 その変動分をそうでない部分と分けて考えることが重要である。 変動分だけで閉じた保存系を考え、 これを「変動圏」と仮に名付ける。「変動圏」の定義は 時間スケールによって異なるが、 ここでは取敢ず人類の歴史を含む最近百万年を考え、 それに対応した大気圏・水圏・生物圏・固体圏それぞれの変動分と 人間圏とからなる保存系の記載(地理学)・素課程解明(物理学)そして 人為的改変可能性(経済学)を論じる。
「macroscope」
増田 耕一 (地球フロンティア研究システム)
Macroscopeは、複雑な世界を人間の能力で理解できるところまで 単純化するための道具であり、要するにモデリングである。 ここでは、グローバルな水循環を対象に想定して、 どんな道具がほしいか、わたし自身はどんな役まわりを演じたいか、を話したい。
「変わりゆく水文学は水循環環境科学を目指すのか?」
沖 大幹 (総合地球環境学研究所、東大生研、 地球フロンティア研究システム)
地球環境問題への社会的認識の深まりと取り組みとに呼応して、 水文学はこの20年で大きく変貌しつつある。学問内融合、理理融合、 文理融合を通して、水循環の科学としての水文学が現在何を志向していて、 何を目指すべきなのか、国際的な議論も踏まえつつ議論したい。

◯16:40 総合討論 座長: 山中 康裕

◯17:00 閉会

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