出世さんの論文

 

対流性降水の分類に役立つ

11/2’10

 

要旨:

東シナ海の雨季において、偏波レーダでは対流性の雲でも融解層(ML)の特徴が観測される。MLの出現比および、出現高度(シグナルの最大値で定義)の変動をCバンド偏波レーダ(COBRA)により、解析した。対象は200662日である。解析に当たり、従来の層状性雲・対流性雲を分離する手法に加えて、偏波によりMLを抽出する手法を開発した。Zにより対流雲を識別する段階とρhvによりMLを抽出する2つの段階がある。これにより

1MLがある対流性降雨

2MLがない対流性降雨

3MLがある層状性降雨

4MLがない層状性降雨

が分類される。

MLは対流性降雨の53.9%に出現し、層状性の雲では83.1%出現した。対流性の雲のMLZDRが増加するρhvの最小で定義される。ML付近は雪の凝集が活発になる。

ρhvの極小高度であるMLSM4.64qであり、層状性の領域より0.46q高かった。また、0℃高度(4.37q)よりも0.27q高かった。

 

2

観測モードの詳細

6分刻みで14PPIRHI1スキャンを実施。

RHIはヒット数が128と多い。

ρhvの補正を実施。

10dBZ未満は棄却。減衰補正はZφ法により実施。

3章降水タイプ判別

・層状性と対流性:バックグラウンドに対して、どれだけ突出しているか?

↑平面分布に対して、対流性エコーを検出する。

 

MLSM:融解層におけるρhvの最小値=ML(融解層)信号のMAX

11/4’10

 

5(d)

ρhvの分布?

 

降水タイプの判定結果

6

融解層有り無しも判定。−11/8’10

 

4.対流性降雨における融解層出現の特徴

4.1出現頻度

レーダの走査距離で評価。RHIで走査した距離のうち、53.9%が融解層あり、40.2%が融解層なし、のこりは0度高度で探知レベル以下であった事例である。

層状性は83.1%が融解層あり、14.8%が融解層なしである。

【母集団:】627~10時の31RHIスキャン。2qの観測長積分は1100.5q。このうち15dBZより大きい値は838q。対流雲は約2割の90.5q。

【雲の速度として30q/時=500m/分。を仮定すると、全部で2200分=36時間、5分スキャンで考えると440回】

4.2ρhvの最小値の高度

対流性ではMLSM(融解層におけるρhv最小値)高度が層状性より高い。きちんと見ても、低いことは少ない。11/12’10

 

5.2     対流性MLの最小ρhv高度

頻度分布でみて、対流性の降雨ではρhvの最小高度が高くなる傾向について議論した。那覇の高層観測と、地表の気塊の持ち上げによる気温変化を比較した。

持ち上げ気塊の温度は周囲より高くなる。CMLでは、凝集した雪粒子が融解することでρhvが上方にある。

Teshiba(2009)では、オクラホマの観測でCMLの高度が下方にずれることを示した。ウインドプロファイラで霰粒子の融解について言及。コブラの観測例では融解粒子は雪粒子と考えるので落下速度が小さく、MLが上方にずれているのは妥当と考える。11/15’10

 

参考文献

  Brandes, E. A., and K. Ikeda, 2004 (ポイントは偏波を使って融解層高度を正確に把握できるということ)
当該論文の要旨:偏波レーダで観測される融解層の判別手法について述べる。このアルゴリズムは、融解層からの強い信号とその他の部分に分割できることに特徴がある。アルゴリズムは、反射強度因子、偏波解消度、偏波間相関係数の観測値を適切に用いる。融解層の判定はすべての体積探査で可能である。層状性の雲(レーダから60km範囲内、25dBZより大きなブライトバンドを持つ)に適応した場合、100-200mの精度があった。12/16’10

イントロ:偏波レーダで観測される融解層の例。ρhv最小値の高度分布。SML(層状性ML)の例。
CML
の特徴の説明。SMLの観測例として示す。
使っているレーダはNCARS-pol
p1543r
融解層の観測は、ボリュームスキャン・RHI・鉛直観測モードで可能である。鉛直観測モードでは現業の距離分解能に、鉛直観測の分解能が依存する。
p1543l RHI
・鉛直観測モードはWSR-88Dでは実施できない。0.5°〜19.5°を9ないし14仰角で観測している。Sanches-Diezma et al(2000)は複数仰角で融解層を探査すると実際より上・下に移動するが、このバイアスは平均すればなくせる事を報告している。また、別な方法としては単一仰角で融解層をまたいで観測する方法がある1/5’10
#自動判別、
#3
章は融解層を含む偏波パラメータの鉛直分布を示す。(おそらく、RHIから距離10kmでの鉛直分布を切り出した)
#
ρhvの最小値は、融解に伴って形状・軸比が不ぞろいであること、雨滴が混じってくることで生じる。
#LDR
の極大は、融解中の粒子が傾きを持って広く分布することによって(おそらく、粒子の回転や振動が発生し)生じる。
#
φdpの増加は融解と粒子成長によって、後方散乱の位相変化することで生じている(のだろう)12/8’10
#4

Baldini and Gorgucci 2006
でも「0℃等温層の検出」の文献として引用(0804)

  Bringi, V. N., and V. Chandrasekar, 2001 教科書

  Bringi, V. N., R. M. Rasmussen, and J. Vivekanandan, 1986 霰の有価に関する研究

  Bringi, V. N., K. Knupp, A. Detwiler, L. Liu, I. J. Caylor, and R. A. Black, 1997 フロリダでの対流性降雨の観測

  Cressman, G. P., 1959 内挿法

  Gibson, S. R., and R. E. Stewart, 2007 (読んだ記憶あり、飛行機観測だったか)


  Giangrande, S. E., J. M. Krause, and A. V. Ryzhkov, 2008 偏波による融解層判定 WSR88D

  Ikeda, K., E. A. Brandes, and R. M. Rasmussen, 2005 
NOTES AND CORRESPONDENCE: Polarimetric Radar Observation of Multiple Freezing Levels
 Kyoko Ikeda, Edward A. Brandes, Roy M. Rasmussen Journal of the Atmospheric Sciences Volume 62, Issue 10 (October 2005) pp. 3624-3636
オレゴン州のS-Polを使った雲物理パラメータの検証実験があった。その中で融解層が2重に観測された事例があったので、偏波レーダで検証した。2重の融解層は、温暖前線上で、発達する融解層の上に古い融解層が重なって構成されている。2つの融解層の粒子の特徴は似ていた。前線を通過する際に、再び0度以下になるので、発達する融解層の上では、氷板や凍雨ができた可能性がある。
ドップラの風場から「温かいコンベアベルト」がはっきり見える。強風(ジェット)が強化され、発達した融解層を通って下降していた。しかし、風速の上昇は融解や降水量の強化には関係ないようである。【融解層の自動検出を考える上で、2重の融解層はどのようなものであるかを調べておくことは非常に重要】4/15’11

 

 

 

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偏波を用いた融解層自動判別の論文

Application of Dual-Polarization Radar Melting-Layer Detection Algorithm Boodoo, et al 2010

S帯のレーダ用に開発された融解層判定のアルゴリズムを、C帯へ応用。カナダのオンタリオ、キング市のレーダ。融解層高度と融解層の厚さを自動判定する。航空機観測の0℃高度と比較した場合よい一致を示した(前線の通過2事例)3年間の調査で融解層高度を調べた。アルゴリズムから得られた値は、数値モデルの結果とよい一致を示した。融解層高度と湿球温度0℃高度は相関係数0.96であった。年間19回ある前線の通過に対して融解層の変化がよく検出されることが示された。11/22’10

 

Analysis of Z–R Relations Based on LDR Signatures within the Melting Layer Stefan Kowalewski and Gerhard Peters 2010

MRRを使っている。】

融解層はLDRのピークになる。MRRKaの偏波レーダを比較した。

LDRで分類するとZR関係式の精度が向上する。

偏波を使ったQPEへの効果は、他の研究が待たれる。11/22’10

1.イントロ

レーダの特徴は時間・空間分解能にある。定量測定ができる。

ZR関係式を降雨タイプ別に分けて精度向上するという、初期の試みは融解層の判定に基づいていた(Ulbrich and Atlas2002)

鉛直ドップラレーダを用いて粒径分布を知るというのはAtlas et al.(1973)に提案されたが、設置地点でしかわからないという問題がある。

航空機レーダ、衛星搭載レーダでも問題となっている。

偏波レーダを用いて、ZR関係式の向上を図る。

層状性の雲は、誘電率の変化(偏波解消度?)に敏感なパラメータが融解層で極大を示す。現在の雨量算出方法に有効な価値を加えることができるかどうかを調べた。

11/24’10

研究のポイントは融解層内の偏波解消度を測定することにある。

2.観測装置

MRRMIRA36Ka帯偏波レーダ)は、層状性の弱い雲を扱うので、鉛直運動による誤差、減衰の影響は小さいと判断する。

3.LDR分類手順

3a.融解層の中のLDR

層状性の降水において、融解層は、レーダ観測から明確に特徴付けることができる。

融解層においてLDRが極大を示すのは、融解粒子が非球形であること、粒子が水の幕に覆われて誘電率が増大するためと考えられている。11/25’10

LDRは粒子の形状に大きく左右され、粒子の大きさにはあまり関与しない。

LDRの最小値は、その下の粒径と関係がある、と考えている(1556p末尾)11/26’10

 

3b.特徴的な粒径

ZR関係式

 

3c.係数の回帰

3d.解析

 

5.結論

2つの発見があった。

1.LDRの値と係数a(補正係数、Bの変化に対応)に正の相関がある。LDRは融解層において形状よりも数の変化に応答していた。

2.LDRによって雨滴定数を変化させるとレーダの雨量観測精度は向上する。ただし、現在のところ向上の度合いは大きくない。

3/3’11