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雲の構造
台風ガブリエルで見られた、曲がった層状性エコーの解析。ドップラレーダと900Mウインドプロファイラの同時観測。
降水バンドは60km幅で、メソスケールの上下降流が±1m/s以内であった。ブライトバンドは強く、50dBZを超えていた。降水量が大きいところでは10-20mm/hであった。融解層の微物理過程を降水強度、ブライトバンドの形成過程、力学過程(特に下降流)と比較して調べた。
ウインドプロファイラとドップラレーダは融解層の解像度が最大になるように最適化している。これによって、融解層を通じてきわだった(striking)収束発散の小型ペアがあることがわかった。このような融解層はおもに冷却によって生じる小さいスケールの循環があることを示している。上方での融解による冷却は、中層で収束をもたらす。一方で、下層では弱い収束から発散が解析された。融解層の変数化を試みることにより、最大反射強度の高度が上空の収束と下層の発散を分けていることや、凝集が活発な領域で氷粒子の凝集・分裂が混じっていることが明らかになった。
活発な降雨帯では、下降流の影響が、粒径分布やSAMモデル〈sans air
motionModel;プロファイラなどで粒径を求めるときに使う?Williams2002,プロファイラでブラッグ散乱を除いたモデル?2005、プロファイラから降水粒子によるスペクトルと大気乱流によるスペクトルを推定するためのモデルらしい〉のために無視できない。1/14’9
下降流があると、粒径分布から推定する降水量は、鉛直流0を仮定した場合に比べて〈大粒子ほど下向き速度が大きいと仮定するので〉はるかに大きくなるし、ZR関係で得られる降水量は〈大粒子に成長する以前に落下を始める、つまり、大粒子ができにくいので?〉少し過小評価する。降水量の解析はZとBBの強度(つまり、凝集の度合い)と良い相関があったが、BBの高度とはあまり関係が無かった。1/15’9
三章b節 915MHzプロファイラ
図4a ZのTH図。
BBの平均高度4.3km、200m程度振動している。降水強度は23mm/hr、下層のZ最大値は40dBZ。BBの最大値は50dBZを超える。
図4b WのTH図。
Zストリーク(筋、しま)に対応してBB直下で10m/sを超えるところがある。
図4c スペクトル幅のTH図
融解層トップは2m/s程度で落下速度がほぼ一様。それより上にスペクトル幅が4.5m/sを超える領域が存在する。雪の凝集に対応する幅広の落下速度分布。<乱流の影響もあるのか?> 1/19’9
二章 a節 解析技術
鉛直風を求める4つの方法。
1)
反射強度と落下速度の関係
2)
拡張VAD法
3)
准VAD法
4)
SAMモデル(説明は二章b)
ウインドプロファイラの観測値から、粒径分布のパラメータと乱流の鉛直成分のパラメータの最適解を出力する。
最初に全体のパラメータを決めて、次に観測ビンごとに乱流の効果を除いていく。1/21’9
五章a ブライトバンドの構造
図6 545-0631UTC(融解層直下に強い下降流がしばしば見られた期間)の発散と鉛直運動。
<拡張VADは高度分解能が良くない?何が”拡張”?
図7 高度頻度分布
6章 討論
a力学
今回の解析では、Marks&Houze(1987)やBlack
et al.(1996)に比べて、下降流の値が大きい。これは、粒子の落下速度を過小評価しているためであると考えられる。1/26’9
融解層内での収束発散セットの報告は限られた数しかないが、報告がある。しかし、強い層状性のレインバンドで見つかったのは例がない。Szeto&Stewrt(1997)は融解がもたらす冷却がメソの循環を生み出し、融解層内で水平収束を作ることを指摘している。本研究でもQ-VADと発散場で求めたdiv分布から冷却で生み出された循環が観測されている。
上空の収束と下層の発散が融解層の上下が結合している間接的な循環を示唆している。1/27’9
b融解層の研究
HuggelはZ=7dBを閾値としてブライトバンドを定義。本研究ではもう少し大きい。Zは凝集の領域より分裂の領域のほうが大きい。図14は粒径分布の平均。Zは図8で定義され、下層のZとZのピーク値の差。1/28’9
図8 ブライトバンドのパラメータ
ZとかZpeakとか。
図9(a) ブライトバンド付近のTH図
□
:分裂が卓越、○:凝集が卓越する期間。
図9(b) γ、反射強度比、ドップラ速度比の時系列
△:BB高度が低下する期間。
γ:雪のZe×雪のW / 雨のZe×雨のW
Ze,Wは融解層の上下で平均。1/30’9
γの値が小さいと凝集が卓越、γが大きいと分裂が卓越。?
入ってきた雪は出て行く雨に一対一対応していると仮定。
γが小さいということは(相対的に)雪の個数が小さいということ。凝集が卓越と考える。
γが大きいということは(相対的に)雨の粒径が小さいということ。?大胆すぎ?分裂が卓越?2/3’9
Drummond et al 1996 ドップラレーダで融解層を調べた。McGill大。
分裂と併合の効果を調査。大きな雨では分裂が卓越。
P764併合が卓越すると、ZeRとVRが大きくなるのでγは小さくなる。逆に(分裂が卓越すると、ZeRとVRは小さくなるので)λは大きくなる。<融解層内の凝集・併合を見ている>2/4’9
図13a) ZR関係式で求めたRと鉛直流を考慮したSAMモデルによるRの比較,b)は鉛直流を考慮しない場合。
図14 レーダから判断した期間(凝集期、分裂期、BB低下期)ごとの粒径分布。
7章 結論
i)融解層付近で粒子の融解による冷却に伴う発散が見つかった。
2)反射強度因子の最大値で上空収束・下層発散が分離しており、スペクトル幅の最小値があった。
3)SAMモデルから推定したRは、鉛直流を考慮した場合、Zの極大が増えるにつれて増大した。特に凝集期間で顕著に見られた。2/5’9
強いブライトバンドの下の強い降水は、長い距離を落下した大きな凝集粒子が融けて形成される。
4)融解層の底での降水強度は融解層厚と正の相関関係にあった。ただし、融解層の高度そのものとは関係がない。(対象1降雨の複数時間のデータで相関関係を示す。)これは融解でもたらされる冷却が融解層高度を低くしていることと関連がある。大規模な高度の変化誰場、もっと気温や鉛直風の変動に関連するだろう。2/9’9
5)Z−CFAD(Zの高度別出現頻度分布)が融解層の下で均一なのは、捕捉による成長と分裂・蒸発がつりあっていることを示す。すなわち、2km以下で強い下降流があるところでも、粒子は成長するということである。確かに、ZとDmは下方に向けて増加している。ただし、分裂・蒸発の効率のほうが捕捉成長よりも大きいだろう。
凝集と雲竜付着がBB強度にどの程度寄与するかは、気温・湿度・雲水・円直流の分布による。
融解層の下のRSD(雨滴粒径分布)はBBの強度に関連する。
だから、本研究では、Leary&Houze(1979)の提案する落下速度・質量・粒径スペクトルの関係から融解層トップの雪の粒径分布がわかりそうだ、ということをいいたい。定量的に融解層のパラメータと降水の特性を関連付ける予定である。2/10’9
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