地上における粒径分布から降雪粒子の粒径分布の逆推定について

2008/01/16

第1章       粒子の融解状態の再現について

1.1 環境の場と観測結果

急速な融解の見られた20041231日の事例について粒子の融解状態を推定した。

計算手法は松尾&佐粧(1984)にしたがった粒子の変化を計算した。

環境の場はGPV(MSM)の最も近い地点の値を採用した。

1 10分平均のプロファイル

 

2 スペクトル分布図

 

 

 

 

3大気場

1.2 prospect(大気状態から粒子状態の予報)

減率:2km(800hPa)-1℃、0.5km(950Pa)1℃⇒1.33/km

相対湿度:ほぼ飽和なので100%

4 大粒子が融解するときの変化(密度0.02g/cm、粒径30mm)

8mmの雨滴を作るためには密度0.02g/cm30mm程度の初期粒径が必要。そこで密度0.02g/cm30mmの雪粒子が安定成層内でどのように変化するかを 4に示す。このときは、融解層の厚さ(融け始めてから融けきるまで)2000mくらいになる。しかし、実際のブライトバンド厚さは1000mであった。この理由としては融解の潜熱によって環境の減率は小さくなっているが粒子が落下する前の減率はもっと大きいということが考えられる。そこで減率を6/kmとした場合の結果を 5に示す。(減率を変更した理由を科学的に説明せよ)

5 図4と同じ。ただし、減率を6/kmとした。

融解中の粒子は数十cm/s(1m/s)の上昇流によって上に運ばれる、と考えられる。

なお、平均の落下速度は2.5m/s程度であった(計算タイプステップ毎に出力した落下速度の平均値、融解があまり進んでいない状態の落下速度が小さく時間が長いので、融解状態平均の落下速度はあまり大きくない)。融け始めてから融けきるまでおよそ800(2000m÷2.5m/s)、すなわち13分程度である。

1.3 retrospect(地上の粒子状態から上空の粒子状態の推定)

雪の密度を0.02g/cmで一定にして、雪の粒径を変化させて実験を行った。

1融解粒子の初期粒径と終端粒径の整理

初期粒径(mm)

雪の初速(m/s)

Ds^6

終端雨滴粒径(mm)

D^6

終端速度(m/s)

30

2.26

11390625

4.07

71.02095

9.29

20

1.85

1000000

2.71

6.18922

9.07

15

1.60

177979

2.04

1.12616

8.63

10

1.31

15625

1.36

0.09887

7.50

5

0.93

244

0.68

0.00154

4.86

 

2 雪(融解前)の粒径分布・反射強度因子の推定

雪の初速(m/s)

Ds^6

終端速度(m/s)

D^6

dBZ(観測値)

N

雪のdBZe

2.26

11390625

9.29

71.02095

32.0

2.219405

77.54741

1.85

1000000

9.07

6.18922

32.5

0.190437

78.07945

1.60

177979

8.63

1.12616

33.0

0.034126

78.48347

1.31

15625

7.50

0.09887

32.0

0.003090

77.48347

0.93

244

4.86

0.00154

18.0

0.000086

63.48347

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


6 融解前の状況の推定