国土数値情報をArcINFOで使う
1)はじめに
国土数値情報は元々各省庁がそれぞれの国土計画の策定する際に必要なデータを旧国土庁、海上保安庁などが中心となって作成した日本の国土全般に関する様々なデジタルデータ群です。昭和49年から順次データの整備が開始され現在でも新規作成、更新が行われています。最近ではインターネットの普及を受けて、広く一般に向けて無償で提供されるようになりました。
しかし、そのデータ形式は省庁間で利用しやすいように作成されているため、一般のいわゆる地理情報ソフト(GIS)には対応していないことが少なくありません。沖・鼎研究室では現在汎用GISソフトのArcINFO9.0が利用可能ですが、やはり国土数値情報のデータ形式には対応しておらず、ダウンロードしたデータをすぐさま地図上に表現することはできません。
そこでこの国土数値情報をArcINFOのシェープファイル(後述参照)に変換するソフトを用いることで簡単に利用することが可能になります。ただ、「簡単」と言っても、ArcINFOやGISというもの自体がややこしいものなので、特に初心者の方のために、最後に「関連リンク」を付随しておきます。学習の参考にしてみてください。
2)使えるデータ(参考:国土数値情報のページhttp://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)
・データの形式
ArcINFOを用いて地図を作ったり作った地図を編集したりする際、道路や河川、土地利用区分、ダムの位置、といった地理情報データが必要になります。これらの地理情報データは、ArcINFOでは主に「シェープファイル」として格納されています。シェープファイルはその地理情報の空間的な位置や形を座標値などからなるベクトルデータと、それに付随する属性値で構成されています。例えば、A地点からB地点までの道路ならば、それぞれの地点のX、Y座標が「位置と形」で、A地点からB地点までの勾配、国道や県道といった道路の管理者などの情報が「属性」ということになります。そして、このシェープファイルに入っている「位置や形」「属性」をArcINFOが読み込むことにより、視覚的には道路を表す線(ライン)になるのです。(国土数値情報はそれらの値がすべてテキストファイルの表として用意されているため、変換が必要、というわけなんです。)
ArcINFOで利用するシェープファイルは以下の3つに大別されます。
点(ポイント)データ | ベクトルデータで点情報を表す点図形です。公共施設などの地点を表すデータとして使用されています。 |
線(ライン)データ | ベクトルデータで線情報を表す線分です。線データは、線を構成する点情報の集まりで、鉄道や道路など線分によって表現できる地図情報を電子化したものです。 |
面(ポリゴン)データ | ベクトルデータで面情報の領域を表す多角形です。面を構成する線分をつなぎ合わせて生成した閉領域を1つのエリアとして表現します。森林地域や湖沼などを表現できます。 |
また、国土数値情報には上の3つのデータ形式のデータに加えて、「メッシュデータ」と「表(台帳)データ」があります。
「メッシュデータ」は全国を「標準地域メッシュ」と呼ばれるある決まった大きさに区切ったメッシュ(網)に様々な情報を付加していったデータで、それぞれのメッシュについて土地利用区分や降水量などの気候値といった値が用意されています。メッシュデータをArcINFOで利用するには上記の3つのデータとは別の準備が必要になりますが、「3)使い方」を参照してください。
「表(台帳)データ」は、各地理情報(点、線、面、メッシュ)の属性だけを取り出して表にまとめたデータです。例えば「高潮・津波」データには過去50〜100年間の高潮・津波災害の記録が表としてまとめられています。このデータは位置情報が座標値として含まれていないために、地図上に表現するには自分でどの地点の情報なのかを関連づけする必要があります。
・用意されているデータ
実際に用意されているデータは40種類以上あり、都市計画上の地区分類(面データ)や国有林地区(面データ)、港湾施設(点データ)などから、文化財の位置データ(点データ)、商業・工業・農業統計(点データ)まで様々です。
沖・鼎研究室で利用することが多いと思われる水文関係のデータも充実しています。以下に概略を載せておきますが、さらに詳しいことは国土数値情報のダウンロードページを参照してください。
分類 | ファイル名 | データ形式 | 資料年度 | 内容 |
水文 | ダム | 座標(点) | H7 | 位置、コード、規模、貯水量、竣工日 |
河川・水系域テーブル | 表 | H7 | 河川単位流域台帳・水系域流路延長、水系人口 | |
湖沼 | 座標(面) | S50 | 短辺100m以上の故障の位置、面積 | |
湖沼メッシュ | メッシュ(1/10細分) | S57 | 名称、水面標高、最大水深 | |
水系域流路延長 | 座標(点) | S52 | 河口からの延長距離、河床標高値 | |
流路延長メッシュ | 3次メッシュ | S52 | 種類別流路延長 | |
流域界、非集水域 | 座標(面) | S52 | 位置、コード | |
流域・非集水域メッシュ | メッシュ(1/10細分) | S52 | 水系域コード、単位流域コード) | |
河川流路 | 座標(線) | S52 | ||
自然 | 気候値メッシュ | 3次メッシュ | S28〜57 | 降水量・気温・積雪 |
3)使い方
・「国土数値情報変換ツールv.6.00」の使い方
@国土数値情報のダウンロード
まずは国土数値情報ダウンロードページに行って自分の変換したい地理情報データをダウンロードして、適当な場所に保存してください。ここでは便宜上、「流路(線)」データをシェープファイルに変換する方法を示すことにします。(「流路(線)」のデータは6階瀬戸助手横の共有PCの\デスクトップ\いかり\国土数値情報\河川流路にあります。)
A「国土数値情報変換ツール」の起動
「スタート」→「すべてのプログラム」→「国土数値情報変換ツールv.6.00」から変換ツールを起動してください。
B起動画面の説明
ツールを起動すると以下のようなウィンドウが開きます。これが「国土数値情報変換ツール」のメインメニューです。画面上部のツールバーにあるボタンを押して操作します。
左側の赤い枠で囲ったボタンはビューワボタンで、変換後のファイルを右のウィンドウに表示したり、いくつかのファイルを重ねたり、拡大縮小などが行えます。
右側の青い枠で囲ったボタンは変換ボタンです。自分が変換したいデータの種類に合わせたボタンを押すと次のデータ選択画面に移行します。例えば「河川ベクトル」データをダウンロード済みで、これをシェープファイルに変換する場合は、左から2番目の「線(ライン)ボタン」を押します。
Cデータの選択
4)関連リンク
国土数値情報ダウンロードページ (http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/) |
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国土数値情報クリアリングハウス (http://nlftp.mlit.go.jp/chm/gateway.html) |
国土数値情報などの複数の主体が持つ地理情報を検索できるサイトです。(全てのデータがArcINFOで利用できるとは限りません) |
ESRIジャパン社ホームページ (http://www.esrij.com/index.shtml) |
ArcINFOを開発、販売しているESRIジャパン社のホームページです。「サポート」や「ディスカッションフォーラム」は非常に重宝します。 |
GISの扉(ESRIホームページより) (http://www.esrij.com/community/recommend.shtml) |
GIS関連のフリーソフトやフリーで配布されているシェープファイルなどが集められています。 |
標準地域メッシュの解説 (http://www.esrij.com/support/arcview3/material/mesh/) |
「ArcView3」向けになっていますが、基本は変わりません。 |
てくてくGIS (http://home.csis.u-tokyo.ac.jp/~akuri/) |
個人運営のArcGIS解説サイト。講習会資料が非常に役に立ちます。 |
筑波大学「地理情報科学の教授法の確立」 (http://gis.sk.tsukuba.ac.jp/) |
「ArcGIS操作方法」にある各リンク先は、大学のGIS講義のレジュメなどになっており、初心者にとって大変わかりやすいと思います。 |
ページ作成者:
いかりだいすけ(東京大学生産技術研究所沖・鼎研究室修士課程2年)
ご質問などはanchor(at)rainbow.iis.u-tokyo.ac.jpまで。
LastUpDate:06/09/26