資料(配付)—1 (H17理—16)
『第1回MAHASRI国内研究集会』開催報告
平成18年3月9日
地球環境観測研究センター
水循環観測研究プログラム
標記研究集会を、以下の要領で実施した。
○開催の概要
日時:平成18年2月25日(土)
場所:独立行政法人海洋研究開発機構横浜研究所 三好記念講堂
主催:MAHASRI国内会議組織委員会
共催:地球環境観測研究センターと地球環境フロンティア研究センター
後援:東京大学大学院理学系研究科・生産技術研究所,千葉大学環境リモートセンシング研究センター,名古屋大学地球水循環研究センター,総合地球環境学研究所
参加者(敬称略):
委員長:松本淳(IORGC/東京大学)
委 員:石川裕彦・沖大幹・川村隆一(欠)・里村雄彦・鈴木雅一・高橋清利(欠)・田中賢治・増田耕一・安成哲三・山中大学
幹事:荻野慎也・田中克典・鼎信次郎・樋口篤志・芳村圭
参加人数:総計71名
○プログラム概要
・ モンスーン研究の国際的動向 (安成哲三 FRCGC/JAMSTEC・名古屋大学)
・ MAHASRIの紹介 (松本 淳 IORGC/JAMSTEC・東京大学)
・ アジアモンスーン域で重要な陸面プロセス(田中賢治 京都大学)
・ アジアモンスーンと海洋プロセス (升本順夫 IORGC/JAMSTEC・東京大学)
・ メソスケール観測を通してみた日本周囲域の擾乱 (吉崎正憲 気象研)
・ エアロゾルの雲・降水過程への影響 (小池 真 東京大学)
・ アジアモンスーンのリモートセンシング (樋口篤志 千葉大学)
・ アジアモンスーンのモデリング (木村富士男 FRCGC/JAMSTEC・筑波大学)
・ 気象庁の1か月予報システムとその予報精度 (山田真吾 気象庁)
・ 総合討論(コメント:横井 覚 京都大学・院、佐藤知徳 筑波大、山田朋人 東京大・院)
○発表要旨
1.モンスーン研究の国際的動向 (安成哲三 FRCGC/JAMSTEC・名古屋大学)
国際的には、WCRPの下でのGEWEX、CLIVARとの連携がアジアモンスーンについて強く求められている。とくにCOPESの中でどう進めるかが重要。
GAMEの経験をふまえたMAHASRIのあり方:
・モデル研究・予測研究とより緊密に連携した観測研究 気象庁の役割が大きい
・アジア各国・地域のneedsを強く意識した共同研究
・新たな観測からの新たな現象の発見も重要
アジアの研究者・技術者・学生との「科学」の共有と拡大が必要。
2.MAHASRIの紹介 (松本 淳 IORGC/JAMSTEC・東京大学)
サイエンスプランの第2版を配布。「アジアモンスーンの変動機構の科学的理解に基づいた季節以下の時間スケールにおける水文気象予測システムの構築」をめざす。
2006年1月上旬にGEWEX-SSGに提案を提出し、仮承認を受けた。
海洋や大気科学コミュニティーとの連携、気象庁との連携強化をはかる。
多数のプロジェクトをたばねるコーディネーションが重要。
予算がついているプロジェクトは、地球観測プランのみ。今後鋭意獲得していく。
<予定>
2005年9月〜2006年9月:
立案準備期間
2006年9月〜2010年12月:第1期研究期間(2006〜07:
新規観測システムの整備期間)
2008年: IPYと連携した集中観測年の実施
2011年〜2013年12月:第2期研究期間
2014年〜2015年12月: 最終研究期間
2006年4月:
WMONEXワークショップ(マレーシア・クアラルンプール)でのセッション開催などを予定。7月にベトナムでミニワークショップを開催する可能性がある。
10月のGHPでの正式承認に向けサイエンスプランを鋭意改訂する。
2006年10月
16〜18日: APHW(アジア水文・水資源学会、タイ・バンコク)にて、特別セッションを開催、その直後の19−20日に第1回国際科学委員会会合を開催予定。
事務局やデータセンターとしてJAMSTECに積極的貢献を期待。
3.アジアモンスーン域で重要な陸面プロセス(田中賢治 京都大学)
・主要な気候帯・植生での水熱収支の理解はGAMEによって大きく進んだが、気候変動の問題もあり、モニタリングの長期的な継続が重要。
・GAMEでは自然状態での水熱収支が中心であったが、アジアでは、今後は農地(とくに灌漑農地)を適切に扱うことが重要。
・植生ダイナミクスの表現が重要、季節予報のためにはphenologyの予測も必要
・アジアに多数存在する巨大都市も対象にする必要があり、都市気候研究者もとりこむ必要がある。
4.アジアモンスーンと海洋プロセス (升本順夫 IORGC/JAMSTEC・東京大学)
海洋研究者と陸面プロセスの研究者の時間スケールが近年重なってきた。
CLIVARの中では時間スケールの短いインド洋での現象を3例あげる。
・アラビア海南東部のバリアーレイヤーと表層水温変動
・インド洋ダイポールモード現象と季節内変動
・赤道波動と季節内変動
インド洋海洋観測網構築:CLIVAR-GOOS インド洋パネルで、観測網整備計画が進行中
5.メソスケール観測を通してみた日本周囲域の擾乱 (吉崎正憲 気象研)
1) 乱流理論から見た相互作用
2) メソスケール降水系の観測を通してみた擾乱
MAHASRIとの関係:メソ対流系の時間は1日程度、長期間では途中のプロセスがわからなくなることがある。MAHASRIの対象はプロセスが多様で、プロセスの一つ一つについてチェックしつつ進める作業が必要。メソの問題は初期値問題、MAHASRIは境界値問題という違いがありそう。MAHASRIの理念・目的には異存はないが、目的・研究計画の一層の具体化がほしい。
6.エアロゾルの雲・降水過程への影響 (小池 真 東京大学)
IGBPの下のInternational
Global Atmospheric Chemistry でも、近年は気候学的影響を重視。
エアロゾル=大気中にただよう粒子状物質
一次: 大気中に直接放出されるもの 海塩、土壌粒子、black
carbon
二次: 気体から生成されるもの 硫酸...
直接効果:放射過程に効く
間接効果:雲を通じておこる
・MAHASRIにおける研究の意義
エアロゾルは大気の循環、雲降水過程に重要な影響をおよぼしている可能性あり。
アジアでは人為的エアロゾルが多く、雲降水過程、大気の循環を見直す必要あり。
7.アジアモンスーンのリモートセンシング (樋口篤志 千葉大学)
衛星観測に求められる役割
初期値、広域snapshot、 同化も視野にいれて
(THORPEX的)
帰納的知見 -> parameterizationに役立てる (MAHASRI的)
・雲・降水システム -- 日周期
・陸面過程(植生)
・衛星気象学から衛星気候学へ
複数の準気候衛星データを複合した情報の利用
MAHASRIでは、
・現状理解 maximum utilize
・狭いcommunityにとどまらない
・大量データアーカイブでアクセスしやすい形で研究を推進
・モデルチームとの連携が重要
→衛星の結果から観測場所を決めるくらいの先行性が必要。
8.アジアモンスーンのモデリング (木村富士男 FRCGC/JAMSTEC・筑波大学)
GAMEでの中心課題
1. 広域的アジアモンスーンシステム
2. 梅雨前線
3. 日変化
4. 土地利用と地域気候
それぞれ大きく進展。
GAMEでは、データを集め、解析・現象解明、モデルの改良 (=>社会貢献)だった。
今後は、社会的情報もいれ、モデル高精度化と社会貢献できる予測を一体化する方向が重要。むずかしければ、データを集め、解析・現象解明、モデルの改良の各項目に社会との関係をいれていくことが必要。
9.気象庁の1か月予報システムとその予報精度 (山田真吾 気象庁)
気象庁での1か月予報:初期値問題としてシグナルが取り出せると期待。
アジアモンスーン域での気候災害を軽減すべく、確率予報を社会に提示。
北半球500hPa面高度予報のスキル:ENSOの影響を除くとモデル改良に伴って着実に改善。
10.総合討論
コメント
横井 覚 (京都大学・院):インドシナ半島の降水の季節内変動
佐藤知徳 (筑波大):地球温暖化と土地利用変化がモンゴルの気候をどう変えるか
山田朋人 (東京大・院):大気・陸面相互作用による降水予測可能性
・GAMEの時の安成仮説のような大きな仮説がMAHASRIにも必要。
・MAHASRIは基礎研究で、単純明快に説明できる背景・目的・手法を示す。
・中国・韓国との具体的な連携方策を考える。
○決定事項等(昼食時の会議)
学術会議にMAHASRI対応の(小)委員会を設置する。
和文名は「モンスーンアジア水文気候研究計画」とする。
アジア諸国の組織の参加意向を個別交渉できちんと確認する。
今後は学会のスペシャルセッションなどを活用した研究集会を開く。来年以降は毎年地球惑星科学連合に申し込む。
国内アドバイザー委員に海洋分野の人を加える。
国際アドバイザー委員に水文分野の人を加える。
game2メーリングリストはmahasriにそのまま移行させる。
実行委員会メーリングリストなどを適宜整備していく。
以上