水文・水資源学会 2008年度総会・研究発表会のページへ戻る

水文・水資源学会 20周年記念事業討論会

「水文・水資源学はこの20年でどう変わったのか?
これからどう変わろうとしているのか?」

日時:2008年8月28日(木) 15:20〜17:50

場所:東京大学 駒場IIリサーチキャンパス 生産技術研究所
An棟2階 コンベンションホール

ポスター(JPG,PDF



水文・水資源学会の設立20周年を記念いたしまして、討論会「水文・水資源学はこの20年でどう変わったのか?これからどう変わろうとしているのか?」を、上記の日時・場所で行います。本討論会では、学会に関わりの深い5名の先生方より、各自のご専門の立場から、20年間の学会活動および水文・水資源学の発展についての概括、とくに工学・農学・林学・理学・社会科学など多様な専門を持つ会員で構成される学会における学際性のあり方、および今後の水文・水資源学を担う若手研究者へのメッセージをいただきます。その後、総合討論を行います。水文・水資源学会のさらなる発展に向けて活発で建設的な議論となるよう、皆様の積極的な参加を期待しております。なお、本討論会は水文・水資源学会2008年度総会・研究発表会の一環として行いますため、討論会に参加の場合は総会・研究発表会の参加登録をお願いいたします。総会・研究発表会の詳細および会場へのアクセスなどの情報は、こちらのページをご参照下さい。


■ プログラム
15:20〜15:50 話題提供 「水水学会設立の背景、設立趣旨とその後」
虫明功臣(福島大学)
私の学生時代、1960年代中ごろ、水文学は、水理学の先生から“みずぶんがく”と言われていました。水理学が水の動きを主に力学で記述する“手法オリエンテッド”な分野で明確な学問領域を確立しているのに対して、水文学は水循環という“対象オリエンテッド”な分野で当時は未だ概念や論理を文章で記述する面が多かったからだと思われます。水循環機構の解明にはどんな手法でも使うという、この対象オリエンテッドな性格が、前世紀後半から今日まで国内的にも国際的にも提起されたさまざまな水問題を追い風として、水文・水資源学の今日の隆盛のバックグラウンドになっていると言えます。 本日は、学会設立へ向けての背景、設立趣旨の4つの柱、設立後の効果に関する私見について、話題提供をいたします。


15:50〜16:10 講演 「灌漑技術の進歩と課題」
丹治 肇(農村工学研究所)
私に,与えられた課題は,過去20年間の灌漑分野の科学技術の進歩を振り返って,今後の方向を論ずるというものです.過去20年間の灌漑技術の進歩を振り返る事自体が,私の手に余る大課題なのですが,幸いも,課題には,以上のような点を考慮して,議論のための素材を提供することという,付帯事項がついており,議論をスタートするための情報を提供することになっており,これなら私にも可能です.そこで,発表を,1)まず,「過去20年間の灌漑分野の科学技術の進歩を振り返って,今後の方向を論ずる」ための科学技術を整理するための枠組みを提示し,2)次に,灌漑技術発展の特殊性と課題という他の分野との大きな違いについて言及し,3)最後に,議論が抽象的になって空回りしないように,最近の技術進歩の具体例として,北タイでの渇水の調査事例について述べます.


16:10〜16:30 講演 「『水』の科学のリーダーとして」
小寺 浩二(法政大学)
たとえ狭い分野の範囲であっても、20年間の動向をレビューし、将来への展望を語る立場にはないが、曲がりなりにもこの20年間、水文・水資源学にかかわる活動を続け、水文・水資源学会から多くの恩恵を受けてきた者の一人として、自らの経験を中心とした狭い視点ではあるが、この期間を振り返って話題提供を行い、本討論会の主旨に貢献することができれば幸いである。同様の話題が提供される可能性は高いが、モニタリング・データベース・水環境保全・再生・共生・山川海問題・産官学民連携・法律改正・地球惑星科学・公教育などのキーワードに沿って、なるべく独自の事例や知見をもとに、今後の課題とともに述べたい。 本討論会の結果を単なる議論に終わらせず、新たな企画や活動計画に反映させて、本学会が、地球惑星科学の範疇にとどまらない「水」の科学の強いリーダーシップをとりつつ、様々な「水問題」に関して解決の糸口を示していける研究者コミュニティとなっていくことを期待する。


16:30〜16:50 講演 「水文・水資源学の学際性、柔軟性、多様性」
大手 信人(東京大学)
いまでも鮮明に覚えていますが,最初の水文・水資源学会の研究発表会では,地理学,気象学,土木工学,農業土木学,林学といったバックグラウンドを背負った,当時気鋭の研究者達が,自分たちの分野を代表する意気込みで研究発表を行っていました.駆け出しだった私は,水文学にはこれほど多様な地平があるのかということに,素直に興奮を覚えました.そして,そのとき開けた視界のおかげで自分のバックグラウンドから容易にはみだして行くことができました.また,私個人としては,この10年間には,水文学からも逸脱していきました.水文学がそれ自体に学際的特徴を内在する学問分野であり,且つ,周りの様々な学問分野と有機的につながるポテンシャルをもつということを,改めて実感します.水文・水資源学会の存在が私のような研究者に与えたものは,分野の垣根を跳び越えるチャンスとその動機でありました.皆さんはどうだったのでしょうか.


16:50〜17:10 講演 「システム科学としての水文・水資源学」
神田 学(東京工業大学)
水文・水資源学はここ20年で劇的な変化を遂げた。話題提供者は、卒業論文研究から、現在に至るまでの期間、この劇的な変化を目の当たりにしてきた。その変化は、以下の5点に特徴づけられる。(1)要素還元科学からシステム科学へ、(2)個人研究からプロジェクト研究へ、(3)国内競争・協調から国際競争・協調へ、(4)分野内競争・協調から分野間競争・協調へ、(5)情報量の指数関数的増大。このような知のグローバリゼーションを背景に、今後、水文・水資源学がさらにシステム科学としての方向性を強めていくという認識のもと、個人研究者の、立ち位置、素養(ツール)、相補性、のあり方について議論する。


17:10〜17:50 総合討論  
司会:安成 哲三(名古屋大学)