3-2 地球温暖化に伴う将来の降水量変化



3-2-1 はじめに
温暖化した場合の降水量予測に関する研究の現状はどのようになっているのでしょうか? 地球が温暖化すると降水量がどう変わるのかという問題は,水文水資源の分野にとって極めて重要です. このような問題は,世界に複数ある大気大循環モデルによる気候予測を用いて研究されています. しかし,現在のところ,将来の降水量の予測結果がGCMごとに大きく異なっていると言われています. そこで,この研究では,「GCM間の予測差を小さくし,GCMによる降水量予測制度を高める」ことを目的として,

・ 降水量変化の分類
・ 降水量変化に関する定量的アプローチ
・ 降水量変化に関する定性的アプローチ
・ GCM間の予測差の地域分布を調べる

という手順で進めていきます.


3-2-2 降水量変化の分類
ここでは,降水量変化のパターンを6種類に分類し,それぞれA1,A2,B,C,D1,D2としました. 分類には以下の指標を用いています.

・ P = 降水量の平均値
・ SD = 年々変動の大きさ
・ CVP = 変動係数(SDave/Pave)
ΔCVP= SD2ave SD1ave

-
P2 P1



図3-2-1 6通りの降水量変化分類指標


パターンΔPΔSDΔCVP
A1
A2
B
C
D1
D2



3-2-3 全陸域21地域における将来の降水量変化
ここでは地球上の全陸域を21の地域に分割し,それぞれの地域について個別に見ていきます. 2000年から2029年までを期間1とし,2070年から2099年までを期間2とします. そして,P,SD,CVPがそれぞれの増減を見ますが,6つのGCMでの結果を見て, 減少傾向が目立つ場合を大きな減少(赤色),やや減少傾向にあるものを小さな減少(橙色), 増減があまりないところは増減なし(白色) やや増加傾向にあるものを小さな増加(水色),増加傾向が目立つものを大きな増加(青色), GCMごとに結果が異なっているものを灰色としました.

(期間2 − 期間1) ×100

期間1

・ 期間1 = 2000-2029
・ 期間2 = 2070-2099


図3-2-2


このように見てみると,GCM間で予測の不一致を示す地域が多いことが確認できます.


3-2-4 6つのGCMによる将来の降水量変化パターン
6つのGCMの期間1と期間2の年平均降水量変化予測を見てみます. 下の図3-2-3で青い部分は10%以上の降水量増加, 白い部分は10%以内の増減, 橙の部分は10%以上の減少を示しています. こうしてみると,降水量変化には地域性があることが分かります. 将来の降水量は,高緯度では増加,中緯度では変化がなく,低緯度では減少するという大まかな傾向が見られます.


図3-2-3 6つのGCMごとの将来の降水量変化パターン



3-2-4 6つのGCM間の降水量変化パターンの一致度と,その東西平均値
ここではまず,6つのGCM間の降水量変化パターン一致度を見ます. 図3-2-4では,6つのGCMのうち5つ以上の予測パターンが一致している場合を「一致」とし, 増加の場合には青色,減少の場合には橙色,変化のない場合には緑で示しています. 白くなっているのは一致していない地域です.


図3-2-4 6つのGCM間の降水量変化パターン一致度


次に,図3-2-5のように降水量変化パターンの一致度を緯度別の東西平均で見てみます. すると,高緯度では高い一致度が見られます. また,大気収束域で高く,大気発散域で低いことが分かります.


図3-2-5 降水量変化パターン一致度の東西平均


以上のように,GCM間の予測の差が大きいといわれている将来の降水量変化ですが, 定性的に見ると,高緯度で高い,あるいは大気収束域で高いなど, ある程度の一致度が見られることが分かりました.