流域水文学の領域

都市水循環

近年の都市開発は都市と密接な関係を持つ河川に大きな影響を与えています。 市街地の拡大は不浸透域の増加の原因となり、その結果河川の洪水ピーク流量の増加、流出時間の短縮化による 大規模な洪水現象をおこします。 また都市への人口集中は河川の水質汚濁、基底流量の減少をひきおこしました。
このように、都市化による環境変化は周辺の河川に多大な影響を与えます。そしてその影響の 中には都市に被害をもたらすものも存在します。
このような背景をもとに、当研究室では都市河川流域の都市化の現状と河川への影響を把握し、都市河川流域の 水循環を明らかにする研究を行っています。


都市流域における水循環系の解明とその再生策 -都市流域の水循環のモニタリング-

都市域の水循環系は大別すると、
1 自然的水循環経路
2 雨水ー人口排水系経路
3 給水ー排水経路
の3経路から成っているが、都市化流域ではそれらが複雑に交錯し、相互に関連を保ちながら河川流量を 構成している。
本研究では、都市河川流域として海老川流域を対象に、観測値と用水関係 統計資料等を基に、現在の河川流量の構成を明らかにするとともに、将来、 都市域の拡大や下水道の普及等により河川流量がどのように変化するかを予測し、 貯留・浸透施設の導入による水循環系の保全効果を明らかにすることを目的とした。

1)海老川、前原川とも無降雨日に極めて規則的な日周期パターンが存在する。これは 人間活動の影響が顕著に現れた都市河川の特徴と考えられる。
2)無降雨時日周期流出波形のの変動量は前原川の方が大きい。 これは流域規模の相違(海老川流域が前原川流域の約2.5倍)と、都市化の程度の相違によると考え られる。
3)海老川、前原川とも降雨に対する応答が非常に速く、降雨終了後の流量低減が急速である。